福島アンテナ
須賀川に引っ越してきてからというもの、息子を遊びに外へ連れていくたびに気になっていたものがあります。それが、翠ケ丘公園のすみっこや須賀川市民交流センターの片隅にある郵便受けのようなものです。
見た目は控えめで案内板にくっついているタイプや、木製で置き型のもの、不思議に思って近づいてみると「俳句ポスト」だったのです。作った俳句が投函[とうかん]できるように短冊の用紙が入っているものもあります。
ひとたび目にとまると「ここにも!あそこにも!」という具合で、街角のちょっとした緑地や牡丹園といった観光名所など各地に設置されていました。調べてみたところ、この俳句ポストは須賀川市内に昭和60年から設置しているもので、今では19カ所に広がっているそうです。年に2回選句会が行われていて、年間で八千句ほども届くと知り、「俳句を作る人って、こんなにたくさんいるの」と、びっくりしてしまいました。奥の細道の旅路で松尾芭蕉が滞在していた時代から続く、俳句文化の深さを実感します。
選句会で選ばれた入選句は、市の広報誌に掲載されて目に触れることができます。私が特に楽しみにしているのは幼児から中学生までが対象の子どもの部です。かわいらしさのなかにもピュアな発見を言葉にしていて、鋭い!と、大人も驚くような句が多いのです。学校の取り組みや夏休みの宿題だったとしても、作句することで発見した視点を言葉に落とし込むチカラが育まれていることに感動します。
俳句ポストの存在を知ってからというもの、自分でも俳句や短歌を作るようになりました。俳句は季語を中心に五七五の17音に世界観を凝縮する短詩です。季語辞典を眺めると、今も昔も草花や空をめでる心が変わらないことに気が付き、普段の暮らしのなかでも季節の移ろいに意識を向ける瞬間が増えました。移住する前に俳句が趣味になるとは思いませんでした。
須賀川は、生活の合間に和文化がのぞく街です。俳句ポストは、俳句の入り口にぴったりの存在だと思います。もうすぐ冬の選句会が始まります。読者のみなさんも、俳句ポストに「ちょっとした気づき」を五七五にして、気軽に投句してみてくださいね。
(福島の転入女性が暮らしの情報を発信するサイト「tenten」県中サポーター・高橋夏子。2025年12月25日付情報ナビtimeプラスより転載)
tenten(てんてん)だよりは、転勤や結婚などをきっかけに福島県内に引っ越してきた女性が転入者の目線で発見した福島の魅力などをつづっているコラムです。これから定期的に紹介していきます。
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