ドアを開いた人たち
「じゅうねん」という食材を知っていますか?荏胡麻(えごま)というシソ科の植物で、「食べると十年長生きできる」という言い伝えから、主に福島県や東北地方で、その呼び方で親しまれています。6月~8月にかけて葉が旬を迎え、ハーブのような爽やかさがありながらも独特な香りが、夏の風に運ばれながら漂います。
私は白河市出身で、幼少期はよく須賀川市で農家を営む祖父母の家へ行っていました。とれたてのキュウリやトウモロコシをおやつに食べることが当たり前で、今ふり返ると、とても贅沢な時間でした。秋には、種子を実らせた「じゅうねん」を収穫し、から煎りしてすり鉢で擂ることが毎年の恒例行事でした。擂っていると、ごま油のような香ばしい匂いがふわっと広がり、種子がつぶれる時の「プチプチッ」という音も、子ども心になんだか心地よかったことを覚えています。それに、味噌や醤油、砂糖を加え、青菜に和えたり、お餅に絡めたりして食べていました。その香りや手触り、味わい…大人になった今でも覚えているのは、五感を通じて体感してきたからかもしれません。
私にとっては馴染みがある食材でしたが、「じゅうねん」が話題にあがると、同じ県内出身でも、その存在を知らない人が結構いることに驚きました。会津地方の郷土料理である「しんごろう」や田村市・白河市などで製造されている「えごま油」、いわき地方では「じゃんがら念仏踊り」の歌詞に登場するくらい、長年親しまれてきたそうです。地域によって、その味わい方や親しまれ方が異なるのも魅力の1つだと感じています。みなさんもぜひ、福島の味「じゅうねん」を味わってみてくださいね。
(福島の転入女性が暮らしの情報を発信するサイト「tenten」県中・県南地域サポーター・渡部千紘。2026年8月27日付情報ナビtimeプラスより転載)
わたなべ ちひろ 白河市出身。他県で就職後、故郷の福島県で暮らしたいという思いを実現するためにUターン。県内各地の美味しいグルメを巡ることが好きで、地域の魅力を再発見しながら福島暮らしを楽しんでいる。現在は郡山市在住でtenten県中・県南地域サポーターとして活動している。

tenten(てんてん)だよりは、転勤や結婚などをきっかけに福島県内に引っ越してきた女性が転入者の目線で発見した福島の魅力などをつづっているコラムです。定期的に紹介しています。
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