川内村の自然を香りに~naturadistill 川内村蒸溜所~

川内村の自然を香りに~naturadistill  川内村蒸溜所~

若い世代の声

 福島大学協働プロジェクト学修「川内村の歴史と魅力を伝える」(担当教員:福島大学地域未来デザインセンター特任准教授 藤室玲治)では9月24、25の両日、村内で魅力探究合宿を行った。川内村の魅力あふれる場所に足を運び、働いている方々から思いを聞いた。

福島大学行政政策学類2年 渡邉祐さん

 川内村の自然を生かしたクラフトジン造りに取り組む「naturadistill 川内村蒸溜所」が、新たな地域の魅力を発信している。創業者の大島草太さんが村内の元薬店倉庫を改装して立ち上げ、2024年11月に蒸留を開始。2026年9月には蒸留所2階にレストランバー「oku」をオープンし、県内外から訪れる人を迎えている。
 大島さんが注目するのは、日本に古くから存在する植物だ。中でも「カヤの実」は日本固有の植物であり、福島県内にも多く自生している。しかし、県内の特産品として挙げる人はほとんどいないという。海外ではわかりやすい日本らしいものを使ったジンが作られる中、後発の事業者として同じことをしていては競争できない。そこで文献を手掛かりに、昔から日本にある植物を探し、新たな素材として向き合っている。
 ジンはもともと薬として使われた植物などを原料として薬用酒として開発されたのが始まりである。大島さんは「ジンは薬から生まれたお酒。だから元薬店倉庫でつくることにシンパシーを感じる」と話す。
 製造方法にも特徴がある。一般的な蒸留では様々な植物を加えて沸騰させて気体になったものを冷やすが、これでは、欲しい香りを抽出できない。そのためnaturadistillでは減圧蒸留器を使用する。内部を真空に近い状態にして20度ほどから沸騰させることで、熱による香りの変化を抑え、自然界と同じ香りをを引き出すことができる。植物ごとに蒸留し、一般的には約1週間とされる製造期間も約2カ月かけることで繊細な香りを取り出すことはできないという。
 川内村で事業を始めるには苦労もあった。公共事業が多い地域で、民間がゼロから事業を立ち上げる例が少なく、周囲の理解を得ることや商品の配送などに課題があったという。一方で、大島さんは「行政がやらなくても稼げる事業は、田舎にももっとあっていい」と語る。
 村でのジン造りには、自然から商品までの距離が近いという強みもある。豊かな植物に加え、水資源も重要な要素だ。年間を通して水温の変化が小さい水は、製造に必要な資源であると同時にエネルギー源としても活用できる。
 地域に眠る植物と水、そして人の知恵。川内村の自然を「香り」という形に変えたジンが、村の新たな魅力として県内外へ広がろうとしている。


画像

大島さん(中央)と記念撮影。左から2人目が筆者

画像

ジンの製造に理解を深める学生

画像

大島さんからジン造りについて説明を受ける