若い世代の声
福島大学協働プロジェクト学修「川内村の歴史と魅力を伝える」(担当教員:福島大学地域未来デザインセンター特任准教授 藤室玲治)では9月24、25の両日、村内で魅力探究合宿を行った。川内村の魅力あふれる場所に足を運び、働いている方々から思いを聞いた。
福島大学行政政策学類4年 三浦雪乃さん
川内村民に親しまれ、川内村名誉村民でもある詩人・草野心平さん。村内には天山文庫をはじめとするゆかりの場所が点在しているが、その一つが長福寺である。
長福寺は、川内村と心平さんを結ぶ縁が生まれた場所でもある。先々代の住職である矢内俊晃さんは、心平さんが川内村を訪れるきっかけをつくった人物だ。二人は九歳差であったが、ともにお酒を飲み交わすほど親しい間柄になったという。
長福寺には、天山文庫が完成する前に心平さんが村を訪れた際、宿泊先として使っていた部屋が当時とほとんど変わらない姿で今も残されている。床の間と床脇がある八畳ほどの和室で、ふすまには心平さんが訪れる以前からあったという絵が貼られている。天井は低く、静かで落ち着いた空間が広がっていた。
心平さんの人柄について「豪放磊落だと言われることが多いが、すごく真面目でちゃんとした人だった」と語るのは、矢内俊晃さんの孫であり、現住職の矢内大丘さんだ。大丘さんによると、心平さんは「何歳になっても勉強しなくちゃならない、死ぬまで勉強だよ」と話し、村を訪れて仕事をするときには広辞苑を借りていくほど言葉を丁寧に扱う人だったという。また、村内の人々とお酒を飲んで交流する一方で、テレビやラジオ、文章を通して川内村の魅力を発信していたそうだ。単に村を訪れるだけではなく、さまざまな形で村と関わり続けていた人物であり、川内村の魅力発信に取り組む私たち学生にとって、先輩とも言える存在であったようだ。
現在でも大丘さんは心平さんに関する文献や資料を収集し続けている。「世に広めていく活動をしてこなかった部分もあるが、世の中から心平さんのことが忘れられつつあるのは否めない」。そう話す大丘さんは、できる範囲で心平さんのことを後世へ伝え、その足跡を形として残したいという思いを持っている。
長福寺には、記念館や文学館だけでは知ることのできない、生きた草野心平の記憶が今も息づいている。心平さんが実際に過ごした部屋や、大丘さんが語る数々のエピソードに触れることで、その人柄をより身近に感じることができるだろう。
川内村と心平さんを結ぶ縁が始まった場所でもある長福寺。川内村を訪れた際には、ぜひ足を運び、地域に語り継がれる心平さんの人柄に触れてみてほしい。

草野心平ゆかりの地の一つである長福寺の外観

草野心平が川内村を訪れた際に宿泊していた部屋

草野心平との思い出や伝え聞くエピソードを語る長福寺住職の矢内大丘さん

