ドアを開いた人たち
9歳の息子は絵本やアニメで見るキャンプにずっとあこがれていました。だけど、わが家にはキャンプギアもなければ、インドア派のわたしにキャンプスキルもありません。自然豊かな福島県へ移住したものの、世間一般で「初心者向け」とされるキャンプ場も、わたしたち親子にとってはかなりハードルの高いものでした。
単発のたき火体験イベントに行ってみたものの、わが子は自分の「やりたい」に一直線な自由人。進行を邪魔しないか、迷惑がかからないかと気が気ではなく、終わる頃には母も子もヘトヘト……なんてことも。そんな時、SNSで見つけたのが矢吹町にある「こかげの学校」でした。ここは、一般社団法人ヒトトキトの代表・飯塚さんが牧場跡地を開拓して作り上げた自然体験の場所です。プレーパークや夏キャンプ、農園体験などさまざまなプログラムがあり、この秋から新たに「親子キャンプ」が加わり、参加してみました。
キャンプは夏のものと思い込んでいましたが、虫も減り熱中症の心配もない気候はインドア派の親子にもハードルが下がります。テントや道具は貸してもらえるうえ、中高生のボランティアスタッフや飯塚さんの存在がとても心強いのです。アウトドアのノウハウを教わる上下関係ではなく、一緒になって失敗も楽しめるフラットな間柄があります。ベースにあるのが、飯塚さんの座右の銘で、イベント名の由来にもなった「人生藪漕[やぶこ]ぎ」という言葉です。藪漕ぎとは、雑草が茂る山野をかき分けて進む様子のこと。「人生に正解の道なんて分からない。目の前は藪だらけだけど、悩んだり迷ったりしながら進んでみよう!」というおおらかな世界観が、この学校には流れています。薪を割って火をおこし、鶏小屋の生みたて卵や農園の野菜を使っての食事づくり。どんな活動も子どもが挑戦する姿を見守るまなざしがあります。この親子キャンプデビューを通じて、肩の力を抜いた子育てができるようになっただけでなく、「自分なりに道を切り開けばいい」という人間力まで、息子と一緒に教わった気がしています。
(福島の転入女性が暮らしの情報を発信するサイト「tenten」県中サポーター・高橋夏子。2026年10月22日付情報ナビtimeプラスより転載)

tenten(てんてん)だよりは、転勤や結婚などをきっかけに福島県内に引っ越してきた女性が転入者の目線で発見した福島の魅力などをつづっているコラムです。定期的に紹介しています。
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