福島アンテナ
桜の時期、通勤途中の山沿いに咲く桜を見つけると、「今年もきれいだなあ」と、ついつぶやいてしまいます。移住者の私にとって田村の桜の最大の魅力は、その圧倒的な「近さ」です。有名な観光地へ渋滞に並んで行かなくても、玄関を開ければすぐそこに、スーパーへの道の途中でも、思わず見とれる一本に出合える。そんなぜいたくな春が、この街には当たり前にあります。
田村の桜を紹介するガイドブック「田村の美桜(みざくら)88景」のパンフレットを初めて見た時は、まずその数の多さに驚きました。市内外からたくさんの応募が寄せられたそうで、地域の人たちが昔から呼んでいる愛称がそのまま名前になっているのも、なんだか温かくていいなと思いました。
地図を頼りに訪ねてみると、「えっ、ここ、普通のお家のお庭だよね?」という場所だったり、たまたま通りかかった道にピンクの案内看板を見つけて「ここも88景の一つだったの!」と新発見したり。宝探しをしているようなワクワク感があります。田村の桜には、隣町の有名な三春滝桜の子孫も多いと聞き、この土地の人たちが長く桜を家族のように大切にしてきたことが分かります。
普段の何げない会話では「〇〇さんちの桜、今年も見事だね」「うちの裏山のあの一本もなかなかだよ」と、パンフレットには載っていない名もなき桜自慢も次々と飛び出してきます。そんな時、「あぁ、田村の人たちにとって桜は見に行くものではなくて、一緒に暮らしているものなんだな」としみじみ感じるのです。
じいじが孫のために植えた庭の桜、かつて子どもたちの声が響いた廃校の片隅に立つ桜、山沿いの斜面にへばり付くように、空に向かって力強く咲く桜。誰の目にも触れないような場所で、毎年けなげに花を咲かせる桜を見つけると、なんだか自分だけがすてきな秘密を知っているような、得した気分になります。
いつか88景コンプリートも目指してみたいけれど、今は私なりの推し桜探しを続けたいと思います。皆さんにも、自分だけのお気に入りの桜はありますか? もうすぐ桜の季節がやってきます! 一緒に「推し桜」探し、楽しみましょう。
(福島の転入女性が暮らしの情報を発信するサイト「tenten」ライター・桑原祐子。2026年3月26日付情報ナビtimeプラスより転載)
tenten(てんてん)だよりは、転勤や結婚などをきっかけに福島県内に引っ越してきた女性が転入者の目線で発見した福島の魅力などをつづっているコラムです。これから定期的に紹介していきます。
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