『転入女性のtentenだより』あさつき 春が来ると思い出す懐かしい味

『転入女性のtentenだより』あさつき 春が来ると思い出す懐かしい味

福島アンテナ

 春の柔らかな足音が聞こえ始めると、ふと思い出す懐かしい味があります。故郷・秋田で親しんだ山菜「ひろっこ」です。雪の下から顔を出した淡い芽を、母がよく酢みそあえにしてくれました。とろりとした独特の甘みとゆでることで生まれる柔らかな食感。それこそが、私にとっての「春の訪れ」そのものでした。
 その後、縁あって会津で暮らし始め、地元の直売所で「あさつき」に出会いました。その細長く白から緑へと描く姿は、かつて見慣れた「ひろっこ」と、うり二つ。地域による呼び方の違いだろうと思い込み、懐かしさに胸を躍らせて早速調理してみました。
 しかし、一口食べて大きな衝撃を受けました。「私の知っている、ひろっこじゃない!」
 口に広がったのは、あのとろけるような甘みではなく、大地の力強さを感じさせる鮮烈な風味とはじけるようなシャキシャキ感でした。調べてみると、理由に合点がいきました。ひろっこはあさつきの非常に若い芽であり、雪の下から掘り起こされるものだったのです。一方、会津のあさつきはそれよりも長く土の中で眠り、大地のエネルギーを蓄えたものでした。同じ植物でも、収穫時期や環境でこれほど劇的に変わるとは知りませんでした。
 SNSであさつきの調理の仕方を尋ねてみると、定番の酢みそあえはもちろん、ネギの代わりに調理すると聞いて、卵焼きに入れてみることに。これがまた絶品。ふんわりとした黄金色の卵の中からあさつきの小気味よい歯応えが顔を出し、かむたびに爽やかな風味が鼻を抜けていきます。その味わいは、新たな「お気に入り」として、わが家の食卓に欠かせない一品となりました。 
 直売所で無意識に手に取ったのは、幼い頃の味を身体が自然と求めていたからかもしれません。知らず知らずに自らのルーツをたどり、大好きだった食材の新たな一面を発見できたことは、日々の暮らしの中での確かな春の喜びとなりました。
 皆さんはもう、今年の春の味覚を楽しまれましたか。それぞれの思い出や発見を大切にかみしめながら、どうぞ思い思いの春を心ゆくまで味わってください。
(福島の転入女性が暮らしの情報を発信するサイト「tenten」会津サポーター・成田あかり。2026年4月23日付情報ナビtimeプラスより転載)

tenten(てんてん)だよりは、転勤や結婚などをきっかけに福島県内に引っ越してきた女性が転入者の目線で発見した福島の魅力などをつづっているコラムです。定期的に紹介しています。

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