福島アンテナ
重なり合えば社会動かす厚みに
福島県にUターンして、丸6年が経とうとしています。南相馬市出身の私が、夫の故郷である須賀川市に移住したのは2019年のこと。同じ県内ということもあり、どちらかと言えば「帰ってきた」という感覚がしっくりときます。
大人になり、外の世界を見てきた目に映る福島は、驚くほど新鮮で面白いものばかりです。子どもの頃には当たり前すぎて見逃していた「福島らしさ」。特に震災を経験した私にとって、今暮らす岩瀬地区の穏やかな風景は故郷の景色とも重なり、何気ない日常の尊さを改めて教えてくれています。
帰郷の翌々年、私たちは小さな民泊を始めました。1日1組の宿ですが、地域の魅力を伝えるうちに、いつの間にか自分たちが一番の「福島ファン」になっていったように思います。地域の方々との縁も広がり、未来を語り合える仲間も増えていきました。
そんな折、隣の長沼地区で映画上映会を開く機会を得ました。西会津町を舞台に過疎地域の日常を追ったドキュメンタリーです。2022年の法改正により、長沼・岩瀬地区は市内でも「一部過疎地域」に指定されたばかり。上映会の反響の大きさは、その言葉が住民に与えた衝撃の裏返しでもありました。この熱量を受けて立ち上がったのが「長沼・岩瀬の未来を考える会」です。
現在はプロジェクトの一つとして『過疎地から100人の声(仮称)』を進めています。地域にゆかりのある100人の声を記録し、未来へつなぐ取り組みです。寄せられる声には、懐かしい景色や祭りの思い出など、地域を想う温かな言葉が溢れていました。地元で長く暮らす方の愛着と、外から来た者の視点。これらが重なり合うプロセスこそが、地域の未来を前向きに変える力になるのかもしれないと感じています。
社会課題を語る際、私たちはつい制度や仕組みに注目しがちです。しかし実際は、一人ひとりの「声」から変わることもあるはず。例え小さな声でも、重なり合えば社会を動かす確かな厚みとなります。そんな希望を抱きながら、これからもこの過疎地からの「小さき声」を届けていきたいです。
(福島の転入女性が暮らしの情報を発信するサイト「tenten」ライター・佐藤美郷。2026年5月28日付情報ナビtimeプラスより転載)
■佐藤美郷
福島県南相馬市出身。成田空港勤務、淡路島での地域活性化活動を経て福島へUターン。現在は岩瀬地区を拠点に、夫と「guesthouse Nafsha」を運営しながら、フリーランスのライター・エディターとして活動中。メディア運営を通じ、福島の魅力を等身大の言葉で発信している。
enten(てんてん)だよりは、転勤や結婚などをきっかけに福島県内に引っ越してきた女性が転入者の目線で発見した福島の魅力などをつづっているコラムです。定期的に紹介しています。
tenten https://tenten-f.info/


