UIターン#7/7月「帰りたい景色」<原点>

UIターン#7/7月「帰りたい景色」<原点>

ドアを開いた人たち

福島を選び直した母(福島市出身。2019年にUターンし、娘と二人で暮らす)

■自然な流れで上京

 私は福島市出身です。高校卒業後、東京の大学へ進学し、その後、福岡での生活を経て、2019年に福島へUターンしました。今は娘と2人で福島市に暮らしています。

 実家の窓からは田んぼや畑が広がる様子が見え、夏の夜、窓を開けて寝ると、カエルの大合唱がうるさいくらいに聞こえてきました。林の中の坂道を自転車で走って友達の家から帰る途中、顔に蝉がぶつかってきたこともあります。電車は1時間に1本。時間帯によっては3時間来ないこともあり、帰る時間はいつも電車に合わせて考えていました。

 当時の私にとって、それは特別な風景ではなく、ごく当たり前の日常でした。地元の高校を卒業後、学びたいことを学ぶため、自然な流れで上京を決めました。ただ、東京へ行く前に周りの風景の写真をたくさん撮っていたことを思うと、心のどこかではこの景色を大切に思っていましたし、「いつかは福島に戻る」という気持ちもありました。

■見守られるあたたかさ

 東京の大学では、全国各地から集まった同級生たちと出会いました。その中で、福島での自然に囲まれた暮らしは、当たり前ではなかったのだと気づきました。また、東京では周りに誰が住んでいるのかわからない心細さもありました。福島にいた頃は人との距離の近さを窮屈に感じることもありましたが、離れてみると見守られるあたたかさもあったのだと気づきました。

 大学在学中には、東日本大震災を経験しました。東京にいた私は、福島が今どうなっているのかがわからず不安な気持ちでした。震災後、帰省できるようになってすぐ福島へ戻ると、知っているはずの町は人が少なく、目に見えない不安が漂っているようでした。福島で作られたものが避けられ、地元が危ない場所のようにみられる悔しさもあり、大学のサークル活動の一環で福島県産の野菜販売に関わるようになりました。

■「福島がいい」

 その後も東京での生活を続け、やがて仕事の都合で福岡で暮らすことになりました。里帰り出産で福島に戻ったとき、のどかな風景の中で過ごし、改めてこの場所の安心感を感じました。福岡に戻ってからは、マンションに囲まれた公園でわずかな緑を感じながら、子どもと散歩をする日々もありました。

 離婚を機に、これから子どもと生きていく場所を考えたとき、自然と「福島がいい」と思いました。畑や田んぼ、カエルの声、人との距離感。かつては当たり前だったものが、福島を離れ、親になり、もう一度戻ってきた今、私にとって暮らしを支えてくれる大切なものになっています。(つづく)(20260709)

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※tenten 結婚や、パートナーやご自身の転勤、そしてUターン等により地域に転入した方々(主に女性)の転入後の暮らしのサポートを行う団体です。転入・転勤・Uターン者が「来てよかった」「戻ってきてよかった」と思える社会を作るために、私たちは地域に来た女性の入口となり、居場所と役割をもって自分らしく一歩を踏み出せるきっかけをデザインする活動を行っています。詳しくはこちらのWEBサイトをご覧ください。
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