福島アンテナ
2028年4月運用開始 県内技術開発に期待 世界最大級
会津大は宇宙航空研究開発機構(JAXA)や立命館大などと連携し、月面の温度や砂、真空環境を地上で再現した世界最大級の試験設備を造った。月に似せた環境下で探索車「ローバ」や観測機器などが正常に動くか確かめることが可能になる。2028(令和10)年4月の一般運用開始を目指す。世界では、月や火星の探査が加速している。関係者は、月面探査の分野で県内で技術開発が進み、世界に打って出る企業が出ることに期待を寄せる。
7月1日、会津大が会津若松市の同大で報道機関向けの発表会を開き、明らかにした。同大はこれまで「月火星箱庭構想」と題し、さまざまな切り口で月・火星面を再現した試験環境を開発してきた。福島ロボットテストフィールド(南相馬市)に月面のクレーターを模した走行路を整備。走行路をバーチャル空間で再現し、重力の違いなどを含めて実験できる環境や月・地球間のデータ通信の遅延・障害を確かめるシステムなどを開発した。同構想は四つのパートに分かれており、今回完成した設備で全てが出そろった。
名称は「レゴリス静電浮遊チャンバー(通称・箱庭チャンバー)」で大学敷地内にある先端ICTラボ「LICTiA(リクティア)」に設置。会津大コンピュータ理工学部の出村裕英教授兼宇宙情報科学研究センター長を中心に、JAXA宇宙戦略基金・SX研究開発拠点(代表・立命館大)の一環で研究を進めてきた。真空装置製造メーカー・アリオス(東京都)が装置の製造を手がけた。
箱庭チャンバーは、直径2メートル、長さ2メートルの円筒形でアルミ製の小部屋のような構造物。中には、月面を覆う細かい砂「レゴリス」を再現した砂を入れた箱が納められている。大きさは、縦120センチ、横160センチ、深さ56センチで、探査機の走行や掘削の動作を十分に確認できるという。出村教授によるとJAXAや米航空宇宙局(NASA)にある同様の設備を上回る体積で世界最大級という。
装置の下部にある銅盤で窒素ガスを温めたり冷やしたりし、専用の機器で砂に注入する。砂や室内の温度を月面の環境に近い、マイナス160度から110度の範囲で管理する。真空状態や静電気で砂が飛散するような環境も再現する。出村教授によると国内の実証実験の設備は筑波宇宙センター(茨城県)の「スペースチャンバ」のような、ちりやほこりのない状態で宇宙空間を再現したものや、鳥取砂丘や立命館大、福島ロボットテストフィールドにあるような大気のある場所で月面を再現したものしかなかった。粉じんが発生する環境で真空、温度、電界を再現する設備は国内初で、世界的にも珍しい。
今後、温度制御など改良を加える。国内外の企業などから関心が寄せられているという。出村教授は「県内には廃炉を含めてさまざまなロボット技術が集積している。福島で培った技術を実証し、世界に踏み込んでほしい」と話している。(20260702)
【写真説明】 箱庭チャンバーの構造を説明する出村教授


