『転入女性のtentenだより』大町四ツ角

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『転入女性のtentenだより』大町四ツ角

福島アンテナ

 会津若松市に引っ越して、まず私が驚いたのは、とにかく狭い道が多いことです。狭い道を車で通ると、(ここって一方通行だった?)とか、(こんな狭い道を、すれ違うことできる!?)と、毎日の運転はスリル満点でした。特に緊張しながら運転していたのが、大町四ツ角と言われる食い違いのカギ型の道路です。車で走っていると、対向車は見えにくく、幅も余裕がある訳ではないので、すれ違うときは、ハンドルを握る手に力が入りました。私は不便さを感じて、この道を避けるようにしていました。

 そんなことを思っていた、ある日。城下町を特集している歴史番組を偶然見ました。城下町にあるカギ型の道路は、敵が攻めてきたときに、見通しを悪くすることで、侵入しづらくするための策だということを、私は初めて知りました。確かに自分が敵で、攻め入った道の見通しが悪かったら、いつ相手が出てくるのか分からず、警戒して、この道を避けてしまうかもしれません。

 もしかしたら、大町四ツ角も敵の侵入を防ぐための道なのでは?と思い、調べてみることにしました。すると、この大町四ツ角は、いずれの道もお城に続く道ではないということが分かりました。実は、猪苗代湖から市街地へ用水が通る水路がひかれていて、その用水を南北方向へも行き渡らせるためにわざとクランクさせていたのです。また、高札場[こうさつば]としての役目もあり、幕府や領主のお触れ書きを見るために、たくさんの人々が、この四ツ角に集まっていました。私が不便さを感じて、避けてしまっていたこの道は、当時の町の人にとっては、必要不可欠であり、たくさんの人が集まる、生活の中心だったのです。

 その後、大町で開催される「ほおずき市」の日に、四ツ角の信号に止まりました。たくさんの人でにぎわう様子を運転席から眺めて、当時もこのような風景が広がっていたのかと、いつもの四ツ角が特別な場所に感じられました。何気ない町の中に、歴史があふれている会津若松市は、さまざまな時代の人の思いが交差するすてきな町だと、改めて思いました。
(福島の転入女性が暮らしの情報を発信するサイト「tenten」会津サポーター・成田あかり。2025年11月27日付情報ナビTimeプラスより転載)
 

 tenten(てんてん)だよりは、転勤や結婚などをきっかけに福島県内に引っ越してきた女性が転入者の目線で発見した福島の魅力などをつづっているコラムです。これから定期的に紹介していきます。

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