UIターン#11/8月「強く感じた孤独感」<移住>

UIターン#11/8月「強く感じた孤独感」<移住>

ドアを開いた人たち

 矢吹 哲郎さん(郡山市出身。首都圏で会社員勤めをした後、2023年、南相馬市にJターン。合同会社Hidane代表)

 🔶住んで分かったこと

 南相馬に移住してからの日々は、正直、思っていたようなものとは違いました。

 まず驚いたのは街の変化でした。賠償金や復興支援で建物はどんどん新しくきれいになっていく一方で、そこには人がいません。ひびの入った家が壊されたと思ったら、次に行くともう新しい建物が建っている。目に見えるものはきれいなのに、何か違和感がある。長年続いてきた歴史や文化、それ以上に人の営みが、震災と原発事故によって完全に断ち切られてしまったような感覚でした。これは観光や視察では感じきれない、住んでみて初めて分かったことだと思います。

 活動しているプレイヤーは、とても魅力的でした。震災だからこの場所に来たというより、「ここでなら自分のやりたいことが表現できるかもしれない」という、このエリア特有の余白に惹かれて来ている人が多く、そういう人たちとの会話は面白かったです。また、ずっと踏ん張ってこの土地を守り続けている方々もいて、自分の故郷を完全に取り戻すことはできないけれど、この場所の営みを絶やすまいと励む姿は印象的でした。

🔶「放置された」という感覚

 一方で、移住してから一番強く感じたのは孤独感でした。これは震災エリアに限った話ではないと思いますが、移住する前は、とにかく手厚くて、心地良い言葉ばかりをかけてもらえます。「こんな補助がありますよ」「来たらきっと楽しいですよ」と。でも、いざ住んでしまった後は、率直に言うと「放置された」という感覚でした。移住後のケアやサポートというのは数値化しにくいですし、どこまで必要なのかも分かりません。ただ、見知らぬ土地で、どう関わりを作ればいいのか分からない時間は、生活自体はできていても、ものすごい孤独感がありました。自分はコミュニケーションが得意な方で、自ら動いて交友関係を広げていけるタイプです。それでもそう感じたので、それが苦手な人にとってはもっときついだろうと思います。

 だからこそ、移住する街を選ぶときは、生活環境や補助金の有無以上に、「その街に自分を巻き込んでくれる人」「潤滑油になってくれる人」がいるかどうかで、移住後の気持ちや暮らしが大きく変わってくると思います。住んでからの方が、住む前よりずっと長いです。最初にうまく馴染めれば、そこから地元の人を通してどんどん世界が広がっていきます。だから移住を考えるときは、利便性よりもむしろ、街との接続をしてくれる人がいるかどうかの方が、ずっと大事になってくると感じます。(つづく)(20260813)

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