福島のニュース
諦めない大切さを伝えたい―。交通事故で歩行や言葉に障害を負った福島医大の事務職員小針千穂さん(27)は今春、困難と向き合い夢へ向けた新たな一歩を踏み出した。福島医大の看護学生だった6年半前、交通事故で日常生活に影響する障害を負ったが、医療への志を手放さずにリハビリを続け、看護師の国家試験を突破した。今後も医大で事務職員として働きながら、専門資格を生かした後輩への指導にも臨む。小針さんはいわき市出身で、小学校の授業で保健師から市内の医療の実態などを聞いたことをきっかけに助産師を志した。2017(平成29)年に福島医大看護学部に入学。講義を受け、実習を重ねる中で「より多くの人の健康に関わりたい」と看護師を目指すようになった。ソフトテニス部やアカペラサークルにも入り、活発な学生生活を送っていた。事故に遭ったのは3年の時。2019(令和元)年12月、郡山市の市道交差点で小針さんが運転する軽乗用車と大型トラックが衝突した。小針さんは重傷を負い、約3カ月間、意識不明に。目覚めてからも声が出ず、車いすがなければ移動できない日々が続いた。主治医からは「復学は難しい」と厳しい現実を突きつけられた。それでも、看護の道を諦めなかった。事故で記憶の一部を失ったが「看護師になりたい」との強い思いは消えなかった。発語や歩行がままならない入院中、患者の立場で感じたことを記した「看護ノート」を作成。自身を支える看護師や理学療法士らの姿にも刺激を受け、医療従事者になる思いは日に日に増した。言語や運動のリハビリに毎日取り組み、薄紙を剝ぐように少しずつ回復した。長距離は難しいものの、つえをついて歩けるまでになり、2023年1月に復学した。教員らに支えられながら実習にも参加し、翌年3月に卒業した。卒業後は医大の事務職員になった。看護学部の黒田るみ教授の下で授業資料の準備などの業務を担いながら、看護師になる勉強を続けた。今も脳や歩行機能に障害が残る。障害の影響で覚えたことを思い出せない苦労もあったが、学んだ内容を声に出して録音し、何度も聞き返すなど工夫を重ね、今春、3度目の挑戦で念願を果たした。残った障害を考えると臨床現場に出るのは当面難しいと感じている。ただ、今後も引き続き、黒田教授の授業のサポートを続ける予定で、医療職を志す学生と日々接することになる。来週には今年度初の授業がある。「患者としての経験を生かし、さまざまな医療従事者と連携していきたい」。自分にできる取り組みを模索していくつもりだ。

