福島のニュース
2016(平成28)年4月の熊本地震で甚大な被害を受けた熊本県益城[ましき]町の平田地区で、福島県ゆかりの桜が地域の再生を見守り続けている。三春町の国指定天然記念物「三春滝桜」の苗木から育ったベニシダレザクラで、2度の震度7の揺れで幹が大きく裂ける苦難を乗り越え今春も満開の花を咲かせた。福島との縁を大事にしながら管理を続ける同地区の光永幸弘さん(81)は、「体力が続く限り、守り続けたい」と二つの被災地をつなぐ桜の継承を誓う。(本社報道部・桐谷陸)「今年も見事な花を咲かせたな」。前震の発生から10年となった14日、光永さんは桜を見つめ、つぶやいた。滝桜から生まれた桜は樹高6メートルを超えた。未曽有の災禍から復興した地域を象徴するかのように力強く根を張り、たくましい枝ぶりとなった。桜を育てるきっかけとなったのは2006(平成18)年、益城町へ移住してきた郡山市出身の伊藤松弘さん(84)との出会いだった。交流の中で福島県を代表する名桜の評判を聞き、翌春には三春滝桜を訪れた。凜[りん]とした立ち姿に感動を覚えた。平田地区を三春町のような桜の里にしたい―。滝桜の種から育てられた約2メートルの苗木を購入し、17本を畑だった私有地に植えた。それから数年がたち、2011年に東日本大震災、東京電力福島第1原発事故が発生。津波被害や放射性物質による農作物の出荷停止に心を痛めた。苗木を見るたびに900キロ以上離れた滝桜の古里の復興を願わずにはいられなかった。幹はすくすくと伸び、薄いピンクの花をつけるようになった。福島に思いをはせる中、今度は無情の天災が熊本を襲った。2度の激震によって益城町は家屋の約98%が被災し、光永さんの自宅も全壊した。生きるのに精いっぱいの毎日。1カ月後、断層の真上に立つ桜を見に行くと、根元から1・5メートル縦に裂けていた。ショックだったが、このまま何もせず枯死させたくはないとの思いが湧き上がってきた。「次の世代に必ず桜を残すんだ」。竹の支柱を3方向から立て、樹木の生命力を信じて世話をし続けた。発災からしばらくは開花しなかったが、2018年春に数十輪の花が枝を彩った。地区内で倒壊した住宅の再建が始まった時期と重なり、復興の芽吹きを感じた。幹の裂け目は年月を重ねるごとに小さくなってきている。大地震から10年、光永さんは桜の成長に平田地区が本来の姿を取り戻す過程を重ね合わせてきた。近所に住む伊藤さんとともに成長を見守っている。震災遺構の一つでもあり、県内外から多くの見学者が訪れる。地域にしっかりと根付いた復興のシンボルに願う。「福島の人にもいつかたくさん見に来てほしい」

