福島のニュース
生活圏に出た熊への発砲を自治体判断で可能とする「緊急銃猟」を巡り、市町村は速さと安全を両立する難しさに直面している。昨年9月の制度化後、福島県内で3件行われた。今月上旬の郡山市の事例は出没から安全面などが整い、駆除するまでにおよそ1日半を要した。被害防止には早急な対応が望ましいが、人員の確保や実施範囲の設定、巻き添えリスクの解消などの準備が要る。街中や夜の事案ではより困難だ。熊の出没が続く中、農繁期や登山・山菜採りの季節に入る。制度の実効性をどう保つかが引き続き問われそうだ。予測不能7日午前6時30分ごろ、郡山市富田町の公園(大島自然ふれあい広場)で体長約150センチの熊が目撃されたのを受け、市は緊急銃猟を視野に猟友会や警察と警戒態勢を敷いた。ただ、実際に発砲、駆除したのは日付をまたいだ8日午後3時40分ごろ。30時間以上を要した。この間、熊は小学校付近など各所を徘徊[はいかい]した。対応に当たった市農業生産流通課の担当者は駆除に至れなかった要因に「周辺の安全確保」を挙げる。公園が住宅街にあるだけに、警戒に約100人が従事。箱わなを仕掛けて花火や放水で追い込んだが、熊は思惑通りに動かない。逢瀬川岸のやぶに潜む時間帯もあったが、熊を撃つ場合、跳ね返り(跳弾)や誤射による被害を防ぐバックストップ(遮蔽[しゃへい]物)を確保する必要がある。コンクリート製の護岸は適さず、日没後は朝を待つしかなくなった。熊は8日午前には5キロほど北上。同市喜久田町の郡山ジャンクション(JCT)に近い磐越自動車道のり面にとどまったのを受け、午後2時ごろに発砲による危険性はないと判断。椎根健雄市長が緊急銃猟を許可した。ただ、高速道の通行を止める必要があり開始までにさらに約1時間半を要した。人口が多く、人や車の行き交う市街地では容易には実施条件が整わない実情が浮き彫りとなった。誤算も出没エリア付近の住民からは素早い対応を求める声が上がる。郡山市の逢瀬川沿いに住む50代男性は不安な2日間を過ごしたと振り返り「幹線道路沿いなど、車や人が多く行き交う場所に出る前に対処してほしかった」と注文する。市は市街地における緊急銃猟を見据え、2月に警察や猟友会などの関係機関と対応訓練を実施。役割分担や準備過程を含む手順を確認していた。今回は7日の段階で猟友会を招集するなど一定の成果が見られた一方、課題も残した。市農業生産流通課の担当者は今回のような住宅密集地への出没自体が異例とした上で「指示する側も受ける側も手探りの面があった」と認める。市や警察、ハンターが普段から意思疎通を図る必要に言及した。駆除に携わった県猟友会郡山支部長の小野信太郎さん(67)は「(緊急銃猟という)対応が決まるまで想定以上に時間がかかった」と指摘。市街地での目撃や建物への侵入など、より具体的な事態を想定して対処法を整理しておくべきだとした。制度の周知を県警によると、県内の今年の熊の目撃件数は16日現在で132件。前年同期の23件の約6倍に上る。人的被害こそないが、人里への出没や民家敷地内での居座りが相次ぐ。熊の生態に詳しい福島大食農学類の望月翔太准教授(野生動物管理学)は円滑な運用に向けて「関係機関の訓練と合わせ、市民が熊の生態や緊急銃猟制度などを理解する仕組みづくりも大切だ」と話す。

