福島のニュース
「地元から見て手に負えない巨大事業のように映っている」。双葉郡の建設事業者は、全容が定まらない東京電力福島第1原発の廃炉作業について皮肉交じりに語る。最終形(エンドステート)が明示されない現状は、廃止措置完了までの過程や作業内容の曖昧さを生んでいる。結果として自社の技術が生かせるのか判然とせず、事業者が参入に足踏みする事例につながっているという。作業が多岐に及ぶ廃炉では、防潮堤設置工事や減容処理設備の運用、排気筒の解体作業など地元事業者が関わる機会は増えつつある。一方で、高度な技術を要する作業が多く、資格や経験が求められるものもある。元請けとの関わりや作業経験の少ない新規の事業者が参入しようとした場合、短期間で体制をつくるのは容易ではない。この事業者は「検討していた中通りの企業が断念したケースもある」と明かす。溶融核燃料(デブリ)取り出しなどの重要作業が本格化する中、国、東電に対し「地元企業がどんな強みを生かせるのか具体的な道筋をはっきりと示してほしい」と本音を吐露する。最終形とそこに至るまでの工程の具体性の乏しさは「廃炉の産業化に影響を及ぼしている」と長きにわたって指摘されていた。具体的な工事の発注内容が見えにくければ、必要な人材の確保や組織づくり、技術開発や生産体制の構築など綿密な計画を立てて参入するのが困難なためだ。廃炉の指針となるロードマップの内容を細かく示す対策として、国、東電は中長期実行プランを作成し、毎年更新。直近3年の作業内容などは年単位で記されている。一方、4~12年程度先の工事や設備の概要などは盛り込まれているが、時期は明示されておらず、13年目以降は不透明さを増す。作業の進捗[しんちょく]を把握する面からも、最終形だけでなく、判明しつつあるデブリの性状などの情報を一度集約し、精緻なロードマップを作成するよう求める声は高まっている。日本原子力学会廃棄物検討分科会の柳原敏(福井大客員教授)は、電力事業者だけでは対応できない廃炉の課題解決に向け産業集積が重要と強調。福井県で行政や事業者が連携し、廃炉で生じる廃棄物のリサイクルのビジネス化に向けた動きが進んでいる例を挙げ、関わる企業や連携を増やすためにも工程や中間目標が明瞭でない現状の改善を指摘する。東電は地元企業の参画を促すため、近年は直近の工事予定を示すなど試行錯誤を重ねている。元請けなどを通して設備の点検や工事などの発注見通しを説明する機会を設け、多くの参画にもつながっているという。双葉郡内では、従事するために必要な資格取得に取り組むなど企業の動きが活発化している。大熊町商工会長の蜂須賀礼子は長期にわたる福島第1原発の廃炉について「安全かつ着実に作業を進めるのが最優先」と語る。その土台として地元企業にとって長く携わり経験を持つ人材の育成、子や孫の世代にまで事業をつなげる環境づくりが重要とする。「関わる若い世代を増やすため、どういった仕事があるか、作業の詳細や展望について地元に発信し続ける努力を欠かさないでほしい」と国などに求めた。(文中敬称略)

