福島のニュース
福島県の双葉、浪江両町に県復興祈念公園が開園した2日、初日に足を運んだ県内外の来訪者は、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で失われたかけがえのない日常を思い、復興の進展を願った。古里の土地を提供した被災者は「亡くなった命を思い、災害の記憶を未来につなぐ場所になってほしい」と期待する。災禍から15年が経過し風化が懸念される中、公園の意義を広く伝え、何度も訪れてもらえる取り組みが必要だとの声も上がった。「ここに来ると、当時の町並みを思い出す」。公園に近い双葉町の中浜地区に住んでいた菅本武恒さん(70)=いわき市に避難=は2日、防災林が整備された自宅跡地を園内から見つめた。海のすぐそばにあった自宅は最大16・5メートルの大津波にのまれ流失。原発事故で避難を余儀なくされ、発災から3カ月後に家があった場所がさら地になっているのを目にした。「現実を受け止めるしかなかった」と振り返る。公園整備のため、田畑にしていた、所有する約3千平方メートルの土地を国に提供した。「震災、原発事故の悲惨さをできるだけ多くの人に知ってほしい」と思いを吐露した。公園が立地する双葉町浜野行政区では、震災による津波に地区内の約50世帯の大半が襲われ、14人の尊い命が失われた。自宅が全壊した行政区長の高倉伊助さん(70)は津波の被害を受けた家屋が残る園内にたたずみ、「被害を伝承していけば、防災などの面で役立つ時が来る」と強調、公園が命を悼み、事実を伝え続ける場になるよう望んだ。県外からの来園者の姿もあった。神奈川県平塚市の会社員伊藤秀仁さん(45)、奈由子さん(45)夫妻は長女珠[じゅ]奈[な]さん(13)、長男瑛[えい]智[ち]さん(11)、次女理[り]世[せ]さん(7)と訪れた。「発災当時を直接知らない子どもたちに福島の今を伝えたい」と足を運び、一家で献花台に花を手向けた。珠奈さんと瑛智さんは授業で震災の被害状況を学んでおり、「災害は怖いと改めて感じた」と声をそろえた。理世さんは「震災と原発事故をもっと知りたいと思った」と話した。繰り返し訪れる場に震災と原発事故の風化を防ぐ取り組みが重要性を増す中、来園者や地元住民から、「繰り返し訪れたくなる公園にしてほしい」との声が上がった。妻と来園した矢吹町の塗装業吉成一美さん(71)は幅広い世代が園内に花や木を植える活動を提案。「公園に関わる人を増やし、『また来たい』と思う環境づくりが大切ではないか」と投げかけた。復興祈念公園は岩手、宮城両県にも1カ所ずつ整備されている。宮城県石巻市の石巻南浜津波復興祈念公園、岩手県陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園とも2021(令和3)年に全面開園した。宮城県は被災状況を振り返る講演会などのイベントを定期的に催し、年間の来園者数は約13万~約14万人前後を数える。岩手県は園内に道の駅が併設され、年間約55万人前後が訪れる。本県でも復興への思いに触れてもらうため、多くの来園が望まれる中、内堀雅雄知事は2日、ホープツーリズムなどで公園を訪れてもらう取り組みを進める考えを示した。「逆境を乗り越えて希望に向かう福島の姿を積極的に発信する」と語った。

