福島のニュース
県は今年度、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域内の大熊、双葉両町の海岸近くに農地や農業施設などがある「農地海岸」3地区の復旧工事に着手する。第3期復興・創生期間の終了年度の2030(令和12)年度までの完了を予定し、津波被災した県内の農地海岸19地区の全てで復旧の見通しが立つ。これまで帰還困難区域で手付かずだった農地の再開を見据えた整備の動きは、政府が目指す2020年代の希望者全員の帰還にも弾みがつくと期待される。農地海岸3地区は大熊町の北夫沢(総延長487メートル)と熊川(同1394メートル)、双葉町の細谷(同553メートル)。いずれも津波被害を受け、熊川、細谷両地区は消波ブロックが流失した。北夫沢地区は消波ブロックに加え、護岸ブロックも流された。県は今年度から消波ブロックや護岸ブロックを再設置する工事に入り、2030年度までに作業を終える計画だ。3地区は帰還困難区域内にあるため、手付かずの状態が続いていた。大熊、双葉両町とも2022年に町中心部の避難指示が解除され、今後は特定帰還居住区域の避難指示が解かれていく見込み。政府が2020年代に希望者全員の帰還実現を掲げる中、住民や事業者らの営農が将来的に本格化していくのを見据え、復旧工事の事業化に踏み切った。海岸の災害復旧では7年ぶりの新規事業化となる。これにより、震災と原発事故の発生から15年を経て被災した農地海岸全てで復旧を見通せるようになる。工事が完了すれば、県内の沿岸部で営農できる基盤が整い、生産者や事業者が安心して農業に励むことのできる環境が再構築される。双葉町でブロッコリーやキャベツなどを栽培する黒津今日子さん(36)は「地域の農業基盤が整うことは地元農家の生産意欲の向上につながる」と期待した。原発事故により避難区域が設定された12市町村では、2024年度末時点で営農再開率が約5割にとどまる。このうち避難指示解除時期が遅れた大熊、双葉両町はともに1割未満となっている。既に工事を終えた農地海岸近くでは営農を再び始めた生産者も少なくない。両町の復旧工事により将来的な営農面積の拡大にもつながると期待される。県農村基盤整備課は「沿岸部の国土強靭化[きょうじんか]を進め、将来的な農業の発展に寄与していきたい」としている。※農地海岸国内の海岸は海岸法に基づき、海岸を「漁港海岸」「港湾海岸」「農地海岸」など五つの種類に区分けして津波や高潮、波浪などの災害から守る保全対策をしている。農地海岸は農林水産省が所管し、堤防の背後地に農地や農業施設がある地区の海岸を指す。本県では新地町から広野町まで海岸20地区が指定され、全て県が管理している。県は被災直後から防潮堤や消波ブロックなどの再整備を順次進め、2019年度末までに今回の3地区を除く16地区で復旧工事を完了した。

