福島のニュース
5月下旬、東京・霞が関の復興庁に東京電力福島第1原発事故の帰還困難区域を抱える6町村の首長らが要望に集った。対峙[たいじ]した相手は復興相の牧野京夫だ。「自宅が朽ちていく様を見ていられない」。手にした要望書には避難指示解除の時期が決まらず、国費による家屋解体のめどが立たない地域の住民の悲痛な思いが記されていた。「残り5年での(全ての)避難指示解除は非常に厳しい。中長期的な財源がどうしても必要になる」。双葉町長の伊沢史朗は記者団を前に第3期復興・創生期間終了後を念頭に予算の必要性を訴えた。残る帰還困難区域は約310平方キロと県土の2%分に及ぶ。このうち、帰還を希望する住民のため解除を目指す特定帰還居住区域の指定は25平方キロまで進んだ。同区域の除染などに毎年400億~600億円の予算が投じられている点からも全域解除を目指す場合、さらに数千億円規模の膨大な予算が必要なのは明白になりつつある。地元は産業復興、帰還・移住支援など手厚い事業とともに財源の現状の維持を求める。だが、第3期後も本県復興のため維持されるのか、担保するレールは敷かれていないのが現状だ。国は未曽有の震災、原発事故からの復興に向け、期間ごとの事業費を決め、対応するための財源確保に努めてきた。増税によって国民への負担を求めたのをはじめ、一般会計からの繰り入れ、日本郵政株式売却など財務省を中心とした検討や政治的判断の積み重ねが、20年分の復興財源に当たる34兆9千億円の数字となっている。近年の復興事業の状況は、資材やエネルギーの価格高騰で事業費が膨らむなど従来から大きく変わりつつある。当初見込んだ事業費の範囲で収められるか、「逆風の中で綱渡りを強いられている」(政府関係者)状況という。そこに2031年以降の復興財源確保の難題が加わる。歳入の柱である復興特別所得税の課税期間は本来2037年までだったが、増税分の一部が防衛費に充当されることになり、復興分の課税率を下げた上で2047年まで延長することになった。復興財源に大きな影響は出ない仕組みだが、仮に再度の延長となった場合、国民の理解が得られるかは不透明だ。復興事業は「今世代の負担で乗り切る」との理念もあり、借金に当たる復興債の追加発行は困難との見方もある。さらに、復興庁が廃止となった場合、法制度上、復興特別会計も失われる。「母屋」である一般会計が歳出の増加で窮している状況で、これまで「別棟」の復興特会で手厚い予算措置が講じられた復興事業が加わることになった場合、事業の再編は必至とみられる。復興事業の継続に当たり、原子力政策を進めた国の責務を改めて指摘する声は強まっている。元復興事務次官の岡本全勝は「地震・津波災害と原発事故災害では復興の国の責任の在り方で大きく異なる点を心に置いていた」と制度設計に携わった当時を振り返る。自然災害では「支援」だが、国が東電を監督する立場にあった中での原発事故は「責任を果たす」との前提を霞が関で訴え続けた。岡本は今後の本県復興の道のりの長さ、原因となる原発の廃炉の見通しも立たない状況を踏まえ「東電福島第1原発事故復興基本法」の制定を提言する。福島復興再生特措法で明記されていない予算と財源の措置だけでなく、原発事故の収束、政府と東電の責任の明記、行うべき事業などを骨子とする趣旨だ。「事故の収束と復興についての道筋を示し、地元に安心してもらえるようにしてほしい」と関係者間の検討に期待を込めた。(文中敬称略)

