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「壊してしまえば全てが終わる。議論を深めてほしい」。福島県大熊町教委が4日に開いた中間貯蔵施設内の遺構・文化財の保存や活用を考える検討委の作業部会で「大熊未来塾」代表理事の木村紀夫(60)が訴えた。東京電力福島第1原発の立地町で複合災害の教訓を伝える建物をどう残し、生かすかの議論が進んでいる。焦点は原発の南西4キロに立つ熊町小校舎の取り扱いだ。東日本大震災前は約330人が通い、全町避難で閉校した。築59年の校舎は営みと災禍の痕跡を残すが、一帯は立ち入りが規制されており、自由には入れない。町は建物を遺構化すべきかを見極めようと、2025(令和7)年度に劣化状況を調査。5月下旬の町民懇談会で検討材料として試算を示した。それによれば、校舎の活用に必要な修繕費は2500万円以内、年間維持管理費300万~3千万円、解体費2・5億~3億円、改築費18億~25億円程度に上る。帰還困難区域内の作業という特殊性や、資材高騰を考えればなお膨らむ可能性もある。町は3年前に小中学校とこども園を兼ねる義務教育施設を約45億円で大川原地区に整備。JR大野駅前に昨年、設けた産業交流施設と商業施設には約113億円を投じた。こうした「未来志向」の背景には町の将来の存続への危機感があり、今後も道の駅や産業団地などの大型事業を控えている。町教委は有識者、町民代表らによる作業部会と検討委を年内に数回重ね、伝承内容や活用策を練る。費用の懸念や「原発事故の負の印象が残る」といった理由で遺構化に否定的な声もある中、年度内に示すとされる「一定の方向性」が注目される。被災した教育施設を残した例として、浪江町の震災遺構・請戸小がある。沿岸に立つ校舎を津波の被害や避難の大切さを伝える象徴として町が保存。復興交付金を用い、補修などに約3億7400万円かけて2022年に開所した。2024年度の来館者は最多の7万1941人となり昨年度も7万人を超えた。3月までの累計は28万1137人で、6月中にも30万人に達する。2024年秋には効率化のため指定管理者制を取り入れ、特定NPO法人の海[かい]族[ぞく]DMC(宮城県多賀城市)に運営を委ねた。人件費や消耗品代など年間の運営・維持管理費は約2600万円。町は指定管理料を年間約660万円払う。国・県の補助はなく一般財源で工面しており、入館料収入を含めても、2025年度決算は赤字だった。津波被害に遭った施設の中に立ち入り、学べる場は少ない。「被災の実相を伝える」という趣旨に鑑みれば朽ちるに任せてはおけないが、修繕に使える補助はない。町教委生涯学習課主査の牧谷さゆり(40)は「財政支援があるとありがたい」と話す。この15年、被災地では教訓の伝承に加えて帰還・移住促進や産業再生に向けて数々の施設が生まれた。初期費用には国費が充てられたが、維持管理は整備主体が原則負う。今春に開いた県復興祈念公園(双葉町、浪江町)の場合は国営追悼・祈念施設を含む事業費171億円は全て国費で賄われた。今後、追悼・祈念施設は国、他は県が管理する。県は植栽管理や清掃などに年間2億8千万円を見込む。夏までにロボット草刈り機を入れるなどして効率化を図る方針だ。経費の上振れはないというが、不安定な中東情勢など運営を圧迫しかねないリスクは残る。県まちづくり推進課主幹兼副課長の大山幸子(51)は「未曽有の災害に見舞われた本県には、復興の意志を国内外に広める役割がある」と公園のある意義を語る。東日本大震災・原子力災害伝承館(双葉町)や請戸小をはじめ近隣施設との見学ルート設定など、連携強化に向けた協議に近く入る。年月の経過に伴い被災地への関心が薄れる中、存在意義を広く理解してもらうための利活用が求められている。(文中敬称略)

