福島便り
福島県内のマスコミ各社の代表者らでつくるNPO法人県立美術館協力会(理事長・芳見弘一福島民報社社長)は協力会創立20周年と県立美術館開館40周年に合わせた記念事業として、同館に美術作品を寄贈する。日本洋画の先駆者・高橋由一(ゆいち)の「三県道路完成記念帖」と会津坂下町出身の版画家・斎藤清の「化粧」で、ともに珍しく貴重な作品という。贈呈式は27日に、福島市の同館で行われる。
高橋由一は美術の教科書に掲載されている油絵「鮭」で知られる。「三県道路完成記念帖」は明治時代に福島、栃木、山形の3県で行われていた道路開発の様子を記録した画帳で、各県1冊の計3冊ある。約4カ月にわたり全行程約1300キロを回って各地を写生し、石版画にした。
現存品はふぞろいのものなどを含め9組しかなく、寄贈品のような状態の良いものは珍しい。白河市の旧家から見つかったもので、2017(平成29)年に県立美術館へ寄託されていた。所有者から譲渡の申し出があったため、協力会の購入・寄贈により同館所有の作品となる。
斎藤清の「化粧」は1940(昭和15)年ごろの作品で、女性が鏡に向かって身なりを整える姿を描いている。当時の斎藤は1枚の版木で彫りと刷りを繰り返して色を重ねる技法を使っていたため、作品は一点物という。同館は「斎藤の戦前の技法や作風の展開を明らかにする上で、当館で所蔵する同時期の作品群との比較検討は欠かせない」としている。
各作品は既に常設展示室に並んでいる。