福島便り
福島県内の建設業者が苦境に立たされている。2024(令和6)年度の建設業の倒産件数は2月時点で31件と前年度の総数28件を既に上回っており、過去6年で最多となる見通しとなった。資材価格高騰などの以前からの課題に加え、昨年4月に始まった時間外労働の上限規制への対応に伴う経費増や人手不足の深刻化が経営悪化に拍車をかけたとみられる。同協会の調査では、「週休2日工事」導入が進む一方、適正な工期や工事価格の設定などが追い付いていない実態も判明。協会は県に官民挙げての発注工事での改善が進むよう緊急要望した。
県内建設業の倒産件数は【グラフ】の通り。2019~2022年度にかけては10件台で推移していたが、今年度は1月までに25件が倒産。2月にも6件が加わり、令和以降で最多の28件となった昨年度の総数を上回った。
帝国データバンクや県建設業協会によると、近年は復興特需減少などが直撃し、経営難に陥る事業者が増えていた。今年度は昨年4月から導入された時間外労働の上限規制への対応を迫られたことも重なったとみられる。法定の残業時間を超えないよう従来より多くの人手を確保するため人件費が膨らんだとみられ、同社の担当者は「小規模事業者を中心に規制導入が追い打ちをかけた可能性がある」と分析している。■実情と合わず
同協会の調査では、上限規制導入に伴う課題などがあるとしたのは回答した会員190社のうち約9割に上った。制度などが実情と合わず、事業者の負担が過大となっている実情も浮き彫りになった。
特に目立ったのは「工期」の課題だった。勤務時間を順守する方策として「週休2日工事」の普及が進む一方、工期が従業員の休みを想定せずに短く設定され、期限内の完了のため計画より多くの作業員が必要になった例が報告された。県内で人手が集まらず、交通費などがより多く必要な県外に呼びかけざるを得ない事業者もいたという。「民間の適正工期への理解が不足している」と官民の温度差への訴えもあった。
「経費や単価」についての課題も指摘された。工期を従来より長く設定した現場でも、機械のリース料なども増えた結果、収益が減った事業者もいた。
福島市の日新土建は以前より工期が延び、特に人件費の負担が増したという。桃井三夫社長(65)は「人手不足の業界に定着してもらうには、休日・給料も多くしなくてはならないのに制度全体が追い付いていない」と適正な工事単価の設定などを求めている。■早急な対応を
同協会は、働き方改革と建設業の維持の両立には実情に合った工期や工事費の設定などが官民ともに必要な現状を訴えている。要望を受けた県は市町村などとつくる発注者協議会での取り組み推進、福島労働局などと連携した経済団体への働きかけを強める考えだ。
同協会の担当者は、倒産などが続けば、災害時の復旧対応やインフラの維持などに支障が出かねないとして「激変緩和措置を取るなど建設事業者の存続の手だてを考えてほしい」と早急な対応を求めている。