福島便り
福島県は南会津郡の過疎・高齢化対策として、県内初となる県営ドローンスクールを夏にも旧桧沢中(南会津町)に開校する。当面は地元の企業・団体の従業員らを受け入れ、産業現場における労働力不足の解消、山岳遭難や鳥獣被害などの地域課題の解決に当たる操縦者や活用者を育てる。育成と活躍の実績を積み重ねた上で、県内外から受講者を募り、人口減の進む地域への移住や定着につなげる。
寒冷地におけるドローンの飛行実証の試験場として利用実績のある旧桧沢中を拠点とした。スクールの概要や地域との連携のイメージは【図】の通り。機体を扱う「操縦士」とドローンの活用法に通じた「活用人材」の2コースを設け、各20~30人程度を募る。操縦者育成は民間への委託、活用人材の育成は県による直営を想定している。受講日数や履修プログラムなどの詳細は今後、固める。
修了者は農林業・建設業など担い手確保に悩む仕事の現場にドローンを取り入れ、農薬散布や測量といった作業の省力化、効率化につなげる。遭難者の捜索や鳥獣被害の抑止など中山間地が抱える課題に対処する技術も習得し、地元町村や広域消防などによる活動を充実させる。
修了者の組織化にも取り組み、ドローンによる観光行事や伝統祭礼などの盛り上げに携わってもらう。修了者を中心に、多数のドローンでショーを催す新たなイベント「南会ドローンフェス」を開催し、にぎわいの創出を図る構想もある。
県によると、操縦資格を得られる講習機関として国土交通省に登録された民間施設は県内に15カ所あるものの、南会津郡内には存在しない。郡内で取得を目指す人は郡山市や会津若松市の施設で泊まりがけで学ぶケースもあるという。
地元からはスクール誕生による、費用や労力の軽減に期待が上がる。南会津町によると、町内では人手不足の深刻な業種を中心にドローンの需要が高まっており、町は今年度に操縦資格の取得費を補助する制度を設けた。商工観光課職員も受講予定という。
山々に囲まれた郡内では遭難や熊などによる被害が目立つ一方、救助や対策を担う消防団員は減少している。南会津地方広域消防本部はドローンを2機保有しているが、知識や技術を学ぶ場所が身近にないのが悩みだった。高橋稔雄消防長は「ドローンは人の入れない山奥でも飛行できる。多くの職員が扱えるようになれば防災力の向上につながる」と歓迎している。■人口減対策に15事業
県内7地方振興局
県は2日、県内七つの地方振興局が進める人口減少対策加速化事業として、南会津のドローンスクールを含む15事業を発表した。各振興局の事業は次の通り。
▽県北=県北で進める!働き方改革促進事業、若者のふくしま県北魅力体験事業▽県中=県中地域「しごと」×「移住・定住」推進事業、企業×学生×地域
ときめき出会い創出事業~一人ひとり自己実現する県中地域へ「進取果敢」~▽県南=首都圏からの移住推進&就職先マッチング支援事業、しらかわ“ならでは”の「関わりびと・巡りびと」創出事業▽会津=人口減少対策事業、会津3F(Fun
Fan
Festa)プロジェクト▽南会津=南会津「ワカモノ」ピッチ事業、コネクト・みなみあいづ!プロジェクト、南会ドローン中学校▽相双=相双地域の地域資源再発見事業、相双地域人材確保支援事業▽いわき=「若者・女性に伝わる」企業の魅力発見・発信事業、“合宿”による若者と地域のつながりづくり推進事業