福島便り
福島県立博物館の猪瀬弘瑛主任学芸員(41)らの研究グループは、いわき市の中生代白亜紀後期コニアシアン(約8800万年~約8630万年前)に生息していたフタガタカメムシ科の新種の化石を発見した。同科の化石としては世界最古のもので、アジアからの発掘は初めて。関係者は昆虫の進化を解明する上で重要な資料になると期待する。同博物館が3日、発表した。
フタガタカメムシの化石はこれまでカナダやバルト海周辺などで発見されており、体長は1・5ミリ~3ミリ程度。アジアでは見つかっておらず、これまで確認された最古の化石は恐竜絶滅後の新生代ものだった。
今回の化石は、いわき市の鈴木製麺会長の鈴木千里さん(75)が市内の双葉層群玉山層から発掘した琥珀の中から見つかった。体長は3・38ミリとやや大きめ。口元が突き出すような形状や、小判型の胴体からフタガタカメムシ科と分類した。一方、口が4・43ミリと体よりも大きいという特徴も確認された。このような種属は見つかっておらず新種の「クチナガフタガタカメムシ」と定めて学術誌に掲載した。
分析が進めばフタガタカメムシの進化や生態系の解明につながる。猪瀬主任学芸員は「特徴的な口の大きさなど謎が多い化石。研究を続け、真の姿に迫っていく」と話した。学名には発見地にちなみ「Iwaki」の言葉が使用されている。鈴木さんは「化石を通じ、いわきの名を世界に発信したい」と意気込んだ。