スキー場閉鎖一転 町長が存続模索を明言 福島県南会津町のだいくら、高畑 住民の熱意受け官民組織で

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スキー場閉鎖一転 町長が存続模索を明言 福島県南会津町のだいくら、高畑 住民の熱意受け官民組織で

福島便り


福島県南会津町の会津高原だいくら(田島)と北日光・高畑(伊南)の両スキー場の閉鎖方針案について、渡部正義町長は4日、民間事業者の参入がなければ2030(令和12)年度末で閉鎖するとした案を見直すと明言した。町民から存続を求める声が根強く、約9千人分の署名提出を受けて方針転換した。「公費負担を減らしながら存続の方法を検討する」とし、6月の町議会全員協議会に修正案を出す方針。町民有志と協力し、スキー場を支える官民連携組織を立ち上げる意向も示した。
2月に計5回開いた住民説明会で、存続を求める意見が相次いだ。渡部町長は結果を重く受け止め、「現在の案では町民の理解が得られない」と強調。「まだやれる、との声も多くいただいている」とも明かした。町有の4スキー場の半数が閉鎖となれば、スキー場で働く人や地域経済への影響は大きく、町民の不安も高まる。民意を最大限、反映すべく、存続を模索する道へとかじを切った。
町によると、住民説明会と並行して3月まで一般から意見を公募したところ、町内外から169件寄せられた。運営予算を子育て支援などに割り振ってほしいなどの声が一部にあったが、大半はスキー場の存続を願う要望だったという。
当初の町方針では、財政健全化を目的にスキー場など16の町有観光施設の在り方を見直す。だいくらと高畑の両スキー場は町の財政負担がなく民間事業者が運営する場合に存続させると条件を付け、会津高原たかつえ(舘岩)と会津高原南郷(南郷)の両スキー場は存続させるとしていた。
この四つのスキー場は2006(平成18)年の町村合併で引き継いだ。開設から30年以上が経過し、リフトなどの設備が老朽化している。存続させると、修繕費などに毎年約1億5千万円かかる。スキー人口が減少傾向にある中、スキー場の利用者をどう増やし、同時に財政健全化をどう進めるのか。難局を前に渡部町長は「財政負担をいかに減らすかを考えなければならない」と述べた。■町内外の8938人署名
町民有志でつくるだいくらスキー場を未来につなぐ会は4日、町内外から集まった8938人分の存続を求める署名を町に提出した。
つなぐ会は昨年12月に閉鎖方針案が明らかになった後、署名活動を1月15日から3月31日まで展開。有志約50人が、企業など188団体の協力を得て交流サイト(SNS)やイベントなどでスキー場の魅力を発信してきた。町内分は5554人で、スキー場を訪れるなどした県内外の人も署名した。
町役場を訪れた共同代表の湯田浩和さん(40)と関根健裕さん(52)が「財政状況の厳しさは理解しているが、魅力ある町のため存続させてほしい」と渡部町長に署名を手渡した。湯田さんは署名提出後、町が立ち上げる組織への協力を強調し、「案を見直すとの言葉に期待している。利用客増やコスト削減のために今すぐにできること、将来できることを提案し、スキー場を応援する仲間を増やす」と述べた。
渡部町長は町民有志の活動に感謝した上で、「共に地域を盛り上げていきたい」と意欲を示した。