少子化を生きる ふくしまの未来 第4部「出会い・結婚」(1) 変わる出会い 「アプリ」今や定番

  • [エリア] 福島市 伊達市
少子化を生きる ふくしまの未来 第4部「出会い・結婚」(1) 変わる出会い 「アプリ」今や定番

福島便り


厚生労働省が2月末に発表した人口動態統計(速報値)では、2024(令和6)年の福島県内の婚姻数は5502組と前年の速報値より130組減った。コロナ禍などもあって9年連続で減り続けており、出生数の減少につながっている。一方で「結婚したい」と願う単身者は多数派を占めている。どんな事情が異性との交際や結婚を難しくしているのか。未婚化・晩婚化が進む社会で「お相手」を求める若者の声や、背中を押す人々の姿から結婚事情に迫る。■相手探しも気軽さ重視
女性との出会いが少ない―。伊達市の会社員男性(29)は2019年春に新潟県内の大学を卒業後、Uターン就職してからそんな悩みを感じていた。福島市の勤務先に異性はいるものの、ごくわずかだ。ほどなく新型コロナウイルスが社会にまん延し、人と接する機会はなおさら限られてしまった。
あれから6年。男性はある女性と巡り会い、婚約している。2人を結び付けたのは「マッチングアプリ」だった。
男性がアプリに登録したのは働き始めて間もないころだ。数種類を試した上で登録者数が2千万人を超え、居住地や趣味といった「条件検索」機能が特に充実している一つに絞った。
成果はすぐに出た。3カ月後、1人の女性と出会った。現在の婚約相手だ。自己紹介欄から、アニメやゲームなどの趣味が似ていると感じた。住んでいる場所の近さにも引かれ「いいね」を押した。文字でのやりとりを経て、翌月に初めて対面。映画やドライブなど何度かデートを重ねた末に交際を申し込んだ。現在は結婚後を見据え、新生活に向けた貯蓄や一緒に暮らすための住まい探しを2人で進めている。
男性は「アプリなら、交際がうまくいかなくても気にせずに済む」と利点を打ち明ける。学校や職場など生活環境が重なる相手と交際すれば、仲たがいしてしまうと周囲にも気まずい思いをさせかねない。男性にも心当たりがないわけではない。
その点、アプリを起点とする交際ならば「お互いゼロ」から知り合い、「当事者だけ」の間で話が進んでいく。発展する見込みがなければ関係性を断ち切り、次の相手を探すこともできる。気軽さが魅力だと感じている。
こども家庭庁が全国の15~39歳の男女を対象に昨年、行ったインターネット調査によると、直近5年間に結婚した人の4人に1人がマッチングアプリを交際の入り口としていた。職場や友人・知人の紹介などと並び、すでに男女の出会いの新たな「定番」となっている現状がうかがえる。
男性がアプリで知り合った相手と婚約したことを友人らに伝えると、驚くような反応はなく「おめでとう」と素直な祝福の言葉が返ってきた。出会いの一つの形として市民権を得ているのだと実感した。
「結婚が人生の全てではないし、一人一人の意思を尊重したい」と周囲に積極的にアプリの利用を勧めるつもりはない。それでも、異性との出会いを求める人にとっては有効な選択肢の一つだと考えている。
「ただ、アプリを使って結婚できる人はごく一部だ」。男女の出会いに携わっている専門家は、そう指摘する。