福島便り
「アプリを使えば出会いの機会は増える。ただ、結婚までたどり着けるかどうかはまた別の問題だ」。結婚相談所やウエディングプランナー業を営む傍ら、福島県や二本松市の結婚支援ボランティアを務める本田学さん(54)は自身のこれまでの活動を踏まえ、昨今のアプリ人気には懐疑的な見方を示す。
市内の岳温泉にあるレストランの運営会社に勤務し、店内での婚礼に立ち会ってきた。その経験を少子化対策に生かそうと、10年ほど前に相談所と結婚式プロデュース業を起業。前後して市の婚活応援ボランティア「結婚お世話役」や県の「結婚世話やき人」に登録した。公私合わせて年間10組前後、計100組ほどの結婚を後押ししてきた。
県内の婚姻数の減少は、プロの目にはどう映るのか。本田さんは「若者の気質や社会の変化が原因ではないか」と指摘する。■間を取り持つ存在必要
結婚を巡る意思を県民に聞いた2024(令和6)年度の県の調査では、対象とした未婚の男女約2100人のうち、約68%が「いずれ結婚するつもり」と回答した。婚姻数が年々減少している一方、若者の結婚への関心や意欲は低下しているわけではない事情がうかがえる。
一方、恋人の有無について「交際している人はいない」が約75%に上った。いずれ結婚を考えている男女が独身でいる理由は「適当な相手に巡り会わないから」「異性と出会う機会そのものがないから」が合わせて4割を占めた。結果からは結婚を望みながらも、男女が出会う機会の少なさから前へと進めない若者の姿が浮かび上がる。
女性の県外流出に伴い、県内では若年層の男女に数の不均衡が生じている。婚活の現場も同様の状況にある。本田さんの相談所が加盟している大手相談所の会員約9万4千人の男女構成は、全国的に見ればほぼ同数だが、県内に限ると男女比は「7対3」まで開くという。
本田さんはこうした状況を踏まえ、ボランティアとしても行政の婚活イベントの周知や運営に携わるなどして、男女の出会いを促してきた。「より多くの人が交際や結婚にたどり着くためには、間に立って当事者を後押しする存在が必要だ」と強調する。
結婚を望む多くの男女と向き合ってきた本田さんは「近年の若者は素直な性格の人が多い一方、相手の関心を引き付けるのが苦手な人が少なくない。だからこそ、男女の間を誰かが取り持つ必要がある」と分析している。交際経験の少ない男性には、会話術や女性の立場に立った話題などを丁寧にアドバイスしている。本田さんの相談所では、入会から1年以内に結ばれているカップルが多い。何度かの面会を重ねた上で相手への好感触が続く場合は、半年程度を目安にプロポーズを勧める―といった具体的な交際の進め方も提案している。
若い男女の出会いと結婚を促したい。県内ではそんな企業の取り組みも始まっている。