主要施設に地元産再エネ 福島県会津若松市の本庁舎や学校 使用電力実質100%賄う 脱炭素へ効果検証

  • [エリア] 会津若松市 喜多方市

福島便り


国の脱炭素先行地域である福島県会津若松市は今年度、市役所本庁舎、学校などの主要公共施設で、電力を全て地元産の再生可能エネルギーに転換する取り組みに乗り出す。電力事業者やエネルギー企業と連携し、脱炭素を優先的に進めるエリアの対象施設で先行して始め、効果を検証する。市によると、市役所本庁舎の電力を地元産100%の再生エネで賄うのは県内の他自治体に先駆けた取り組み。民間企業や家庭への普及、避難所となる公共施設の災害対応力向上も見込んでおり、事業を通して再生エネの地産地消を加速させる方針だ。
市が今年度、再生エネに切り替えるのは、市長室や議場が入る追手町第2庁舎(仮本庁舎)、会津稽古堂、鶴城小、湊学園など9カ所の高圧受電施設。いずれも人口や産業の密集度、地域性を踏まえて市が先行的に脱炭素に取り組む3エリア(鶴ケ城周辺、会津アピオ周辺、湊町全域)のうち、市中心部の鶴ケ城周辺と郊外の湊町に所在する。既に8施設で導入しており、5月7日に供用開始する市役所新庁舎も事業の対象とする。
市のスマートシティ事業に関わる一般社団法人AiCT(アイクト)コンソーシアムに参画する大手エネルギー企業や、電力事業者などで構成する任意団体「会津エネルギーアライアンス」が太陽光などによる発電や供給を担う。対象施設のうち、一部施設に設置された太陽光パネルの発電に加え、会津電力(喜多方市)が市内湊町で太陽光で発電した電力や、電力小売事業者のバンプーパワートレーディング合同会社(東京都)が市内の太陽光発電施設から調達する電力を買い取ることで、実質的に市内産100%の再生エネとなる。電力供給の安定化に向け発電予測も行い、検証する。
9施設の年間電力使用量は一般家庭約千世帯分に相当する計370万キロワット時で、3エリアの公共施設の消費量の約7割に該当する。全て再生エネに転換することで、年間約1745トンの二酸化炭素排出量がゼロになる。年間電気代は化石燃料由来のエネルギーに比べ、4割減になる見込みだ。
公共施設の電力を地元産再生エネで賄うことは災害対応でも利点がある。市は仮に大災害が発生し、他地域からの送電が絶たれても、避難所となった施設で電力を維持できる効果も見込む。市は今後、3エリア以外の公共施設にも地元産100%の再生エネ供給を拡大する他、民間企業や一般住宅での転換も目指す。
再生エネの地産地消の拡大実現には課題もある。会津エネルギーアライアンスの関係者は「公共施設向けに発電量を増やすには、より多くの設備が必要になる」とし、整備と同時に電力消費量自体の削減も不可欠とみている。民間での導入促進に当たっても「アライアンスに加盟する発電事業者の拡大、市民の協力も欠かせない」としている。