福島便り
2023(令和5)年の福島県内の平均初婚年齢は夫が30・8歳、妻が29・3歳だった。2000(平成12)年の夫28・3歳、妻26・1歳からそれぞれ2・5歳、3・2歳上昇した。出生数の減少につながる未婚化や晩婚化の流れに歯止めをかけるため、社会には何が求められるのか。
「地方で結婚する若者が減っている要因は、都市部とは区別して考える必要がある」。若者文化や家族形成に詳しい弘前大人文社会科学部教授の羽渕一代氏(社会学)は、福島県をはじめ地方の未婚化・晩婚化対策における第一の改善点として、都市部と比べて根強いとされる「性別役割規範」の解消を挙げる。
羽渕氏は「男性が席に座って飲み食いする間、女性は料理や配膳に立ち回っている」という食卓や宴席などの場面に象徴される、「性別役割分業」が地方の家庭や社会には色濃く残っていると指摘する。一方、東京をはじめとする都市部では、こうした時間や労力は、金銭を介して業者を依頼するアウトソーシング(外部委託)を取り入れるなどして解消されつつある。
若年層、特に女性が流出し続けた結果、男性にとって家庭を築く相手となり得る異性の「絶対数」が減った地方の状況を変える上では、進学や就職で一度は古里を離れた女性に、いかに戻ってきてもらうかが鍵となる。都市部の暮らし、社会の在り方に触れた女性にUターンしてもらうためには「性別による不平等、ジェンダー問題を改善しない限り、地方の未婚化・晩婚化は解決しない」と強調する。
羽渕氏は婚姻の減少には「結婚=しなければいけないもの」という社会的な圧力が減ったことも作用しているとみる。日本社会でかつて盛んだったお見合い婚では「縁談を取り持った親族や上司の『顔』をつぶせない」という意識が互いを交際、成婚へと向かわせた。恋愛結婚が主流の現代、男女の出会いや交際にそうした機能は薄れた。「結婚をしない選択」を含めた多様な生き方が、家族からも職場からも容認されている。
時代の変化に伴う「出会い方」の変容に加え、福島県を含む地方のコミュニティーでは、女性が結婚に伴い被る不利益が都市部よりも強く存続しているため、男性と夫婦になる選択をしづらくなっていると指摘する。
現状を変えるため、行政に求めるサポートとしては「交際や結婚に関心のある単身男女向けに公営住宅を整備すること」を提案する。家賃の補助や、共同炊事場のような住民が触れ合える場を設けるなど、メリットを感じられる住居を提供すれば当事者の交流が生まれるとの考えからだ。「財政負担や対象者の選定など整理すべき課題は当然ある。ただ、局面を変えるためには思い切った政策も必要ではないか」と検討を求めている。
=第4部「出会い・結婚」は終わります=