福島便り
13日に開幕する大阪・関西万博で企画や設営に関わる福島県民は「福島の元気な姿や、魅力を世界に届けたい」と強い決意を抱く。県土で育まれた木材が世界最大の木造建築物「大屋根リング」に用いられ、安達太良山の「ほんとの空」に広がる光の優しさを取り入れた照明が大阪の夜を彩る。期間中の企画や伝統芸能の披露も福島県の今を国内外に発信する絶好の機会となる。関係者は「福島に足を運んでもらうきっかけになれば」と期待する。
世界中の国と地域の旗がはためき、「いのち」の躍動感や輝きを演出した12日の開会式。万博の照明デザインディレクターを務める福島市出身の東海林[しょうじ]弘靖さん(66)=東京都・LIGHTDESIGN社長=も立ち会った。「安達太良で感じたことが素直に反映されている」
万博全体の照明デザインを指揮している。二本松市の観測拠点「あだたらキャビン」で感じた大自然の息遣いに着想を得て、全周約2キロのリングなどに約5千個の発光ダイオード(LED)照明を配した。まるで呼吸をしているかのように明かりに動きをつけた。
照明は日没の30分前から点灯し、夕闇とともに1時間かけて徐々に明るさを増す。安達太良山の夕暮れの移ろいが、これらのタイミングに生かされている。10月13日までの会期中、二十四節気に合わせて設定した特別な13色が現れる。東海林さんは「自然から学んだ光を通じて、地球上の生き物全ての持続可能な世界につながってほしい」と思いを託す。■6月に参加の福島わらじまつり
90人で練り歩く
東北6県の代表的な祭りが万博に集結する。6月中旬の「東北絆まつり」には、福島市の福島わらじまつりも参加する。万博の参加は2015(平成27)年のイタリア・ミラノに次いで2度目。わらじまつり実行委員会企画検討委員長の小口直孝さん(62)は、世界から受けた温かな歓迎を振り返り「震災から14年。『福島は元気です』と伝える機会にしたい」と誓う。
当日は全長12メートルの大わらじの担ぎ手の他、踊り手、太鼓隊など合わせて総勢90人で会場を練り歩く。4月下旬から太鼓練習や全体リハーサルを重ね、本番に挑む。
万博開催100日前イベントが催された東日本大震災・原子力災害伝承館(双葉町)は、復興企画ブースに展示物の提供で協力する。企画事業部長兼企画広報課長の斉藤祐二さん(51)は幅広い世代に福島県の現状を知ってもらえる契機になると期待する。「福島にまで足を運んでもらうきっかけになってほしい」と願う。