ハウス355棟倒壊や変形 福島県の奥会津カスミソウが大雪で苦境 今季出荷量に影響の恐れ

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ハウス355棟倒壊や変形 福島県の奥会津カスミソウが大雪で苦境 今季出荷量に影響の恐れ

福島便り


国内有数の産地として発展してきた、福島県奥会津地域のカスミソウが大雪の影響で苦境に直面している。JA会津よつばによると、柳津、三島、金山、昭和の4町村で栽培・育苗用ハウス355棟に倒壊や変形が発生。被害は全施設の2割程度に及び、営農を諦める年配の生産者も出るなど今季の出荷量に影響しかねない状況だ。生産者団体は5月からの育苗の本格化に向けて栽培法を工夫するなど、産地を維持する取り組みを急いでいる。
JA会津よつばが14日までに昭和かすみ草部会に所属する約90戸の被害状況をまとめた。施設被害の町村別内訳は昭和村が172棟で最も多く、柳津町が147棟、三島町が33棟、金山町が3棟となっている。ハウスの骨組みが雪の重みに耐えられず、変形、断裂するなどの被害が続出した。所有する全施設が壊れた生産者もいるという。各町村は現地調査などを通して被害額の算出を進めている。
部会長の立川幸一さん(65)=昭和村=は「経験したことのない甚大な被害だ」と深刻さを訴える。再建を見通せない会員から苗の購入予約のキャンセルが出ており、「今回を機に営農をやめる」と話す高齢会員も数人いる。部会は「昭和かすみ草」のブランド名で品質を高め、昨年は初めて販売額7億円を超えた。6月の初出荷が迫る中で復旧が滞れば、生産量が減少に転じる恐れがある。
奥会津は豪雪地帯とされるが、近年は降雪量が少なかった。暖冬下で新たに就農した担い手も多く、立川さんは「雪害への対応力が弱っていた」とみる。定期的な除雪が行われない農地では冬期間、ハウスを畳んで保管しておくのが一般的だが、徹底されていなかったという。
被害を教訓として部会は3月下旬に講習会を開き、冬場の備えなどを再確認した。生産者はハウス内の畝[うね]の本数を2列から3列に増やすなど、使える施設の中で生産量を保つための知恵を絞っている。
昭和村は県の特別対策事業を用い、被災ハウスの復旧・撤去費や、生産に必要な種苗購入費を支援する方向で検討している。担当者は「ここまで大きな雪害はなかった。早急に対応したい」と語る。JA会津よつばなどは来週にも人的支援に乗り出す。職員40~50人を昭和村などに派遣し、生産者の復旧を後押しする。■イチゴ、アスパラも被害
会津や郡山、全容判明せず

県によると、大雪によるハウス被害は11日現在で会津地方と郡山市の18市町村の2536棟に上り、イチゴやカスミソウの栽培、水稲育苗用が目立つ。奥会津を中心に積雪が残る影響で全容は判明しておらず、被害額は調査中としている。
東北有数のアスパラガス産地・喜多方市でも影響が出ている。JA会津よつばによると、ハウス倒壊やパイプの一部損壊など157棟に被害が確認された。同市塩川町の農業渡部公仁さん(58)は全体の約半数に当たる17棟が倒壊した。かん水設備にも被害があり復旧のめどは立っていない。「20年以上栽培しているが、ここまでの被害は初めてだ。残った施設で続けるしかない」と話した。
枝折れなどの果樹被害は25件、果樹棚の被害は24件確認された。会津身[み]不知[しらず]柿を手がける北御山生柿生産出荷組合(会津若松市)によると、加盟農家9軒のそれぞれで枝折れが確認された。組合長の高橋康治さん(69)の畑でも3月初旬に枝折れが判明し、1割弱で被害を受けた。
3月半ばまで雪が残ったため、例年は3月中に終える剪[せん]定[てい]を今も続ける。残った枝では芽が膨らみ始めており、より慎重さが求められる。収量は若干減るかもしれないとした上で「品質に影響が出ないよう備えたい」と語った。■県、被害想定上回り復旧予算追加対応も
JAグループ福島によると、大雪の被害は農機具を収めるパイプハウス、畜舎などでも確認されている。県は昨年度補正予算で被災農家の施設復旧費の補助制度を設けたが、被害は想定の1600棟分を大幅に上回っている。予算が不足する場合、追加対応を講じる可能性があるとしている。