福島便り
元福島県警本部刑事部長の菅野年幸さん(66)は今春から、福島学院大マネジメント学部の非常勤講師を務めている。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生直後の2011(平成23)年5月に双葉署長に就き、最前線で復旧・復興に当たった。「警察の役割に加え、震災の教訓を伝えていく」との使命感を胸に教壇に立つ。
菅野さんは福島市の同大宮代キャンパスで3年生に対して「地域における安全安心」、1年生には「福島と復興」をテーマに講義する。半年間で約30回を担当する。14日は3年生約40人を前に警察業務や交通事故を防ぐための考え、県警の取り組みなどを話した。受講した寺島貴大さん(20)=福島市出身=は「警察活動の話を聞けるのは貴重。新たな学びの機会となる」と語った。
双葉署は当時、福島署川俣分庁舎に拠点を移していた。菅野さんは署員と共に署と分庁舎を往復。防護服に身を包み、被災地の治安維持に奔走した。震災前に旧富岡署勤務時代に縁のあった住民が避難先で亡くなった話を耳にし、古里を追われなければならない不条理に胸を痛めた。
菅野さんは福島署長や刑事部長などを歴任し、2019(平成31)年3月に退職した。今後は震災・原発事故以降の警察の対応や自身の体験を学生に伝えるつもりだ。「若い世代に震災の経験を語り継がなければならない」と意気込んでいる。