福島便り
福島県郡山市の木材加工業「オノツカ」は、大阪・関西万博のハンガリー館にあるドームの外観を手掛けた。干し草の山のような形を表現したドームに、いわき市周辺の杉を使用している。代表取締役の小野塚真規さん(52)は「従業員全員で作り上げた。誇りに思っている」と胸を張る。
ハンガリー館は3階建てのビジネス棟とドーム、サービス棟で構成される。来場者に自然と伝統を保護する大切さを伝えることを目的に掲げ、建物には自然や文化的な遺産から着想を得たデザインを用いている。中でもドームは「最大の魅力」とされ、ハンガリー民謡の生演奏が実施される。
オノツカは昨年5月に元請けとなる橋本組(本社・静岡県)と正式契約を交わし、ドームの施工専門の1次下請けとして参加した。取引先の赤井製材所(いわき市)から供給された杉を郡山市の工場でプレカットし、紫外線による劣化を防ぐ塗装を施した。昨年11月初旬から現地での作業に取りかかり、木材429本をらせん状にして高さ約17メートルまで組み上げ、約1カ月で完成させた。
同社は1949(昭和24)年、小野塚さんの祖父久四郎さんが創業した。従業員は約20人で、木材加工や木造建築の施工などを手掛けている。壁が無い建物に窓を多く設けられる「DRフレーム工法」の開発、大きな木材を取り扱える加工機「フンデガーK2i」の導入など、独自の技術を磨いてきた。
小野塚さんは、これまで積み上げてきた実績が大阪・関西万博の建築に携われたゆえんと捉える。「会場に行く県民のみなさんにはきれいに仕上げた福島の木材を見てほしい」と話している。