福島便り
任期満了に伴う福島県郡山市長選は折り返しを迎えた。いずれも無所属の新人で元県議の勅使河原正之(73)、会社経営の高橋翔(37)、元県議の椎根健雄(48)、土木技術者の大坂佳巨(54)の4候補による20年ぶりの新人対決は、20日の投開票に向け激しさを増す。支持動向が複雑に交錯し政党や組織の固定票に不確かさが漂う中、各陣営は浮動票の取り込みに躍起だ。12年ぶりに経済県都のリーダーが代わる選挙戦をルポした。(文中敬称略)
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市内深沢の勅使河原事務所。「勅使河原氏、椎根氏横一線」と報じた16日付本紙を手に、選対幹部は「まだまだ伸びしろはある」と終盤戦に自信をみせる。壁には自民系議員の「ため書き」や農商工団体の推薦状が並ぶ。
市議3期、県議4期の勅使河原は前回市長選で、現職品川萬里に3千票及ばず次点。屋台骨の自民系保守層が分裂したのが敗因となった。今回は、前回争った自民系元市議が告示前に立候補を見送った。すかさず、自民系の市議会最大会派「志翔会」の仲介で、元市議と政策協定を締結。保守勢力の一本化による支持基盤の強化に動いた。
自民党郡山総支部から推薦を得たが全会一致ではなく、党員の一部は椎根の支援に回った。選対幹部は「一本化したが、一枚岩とまでは言えない」と本音を明かす。勅使河原は品川市政を「ある程度評価する」とし正面から批判せず、現職支持層を含めた幅広い集票に余念がない。
候補者の中で最年長。政治・行政経験と実行力が最大の強みと陣営は胸を張る。前回の惜敗後に市民から聞き取った声を、1万人収容のアリーナ建設や災害に強いまちづくりなどの政見に反映させた。無党派層や若年層に食い込むため、交流サイト(SNS)などでの情報発信を強化していく。選対本部長の佐藤政喜は「市民のために必ず結果を出す」と口調を強める。
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市内西ノ内の椎根事務所には、中央政界の与野党の枠を超え、必勝の「ため書き」が並ぶ。自民重鎮の名もある。勅使河原との激戦を報じる朝刊に目を通した選対幹部は「市民党として支持を拡大させる」と表情を引き締めた。
県議会会派「県民連合」の政調会長などを務めた椎根は立憲民主党、国民民主党、社民党の各県連、県民連合、連合福島で構成する5者協議会の支援を受ける。品川市政に距離が最も近く、自民系市議らで構成する市議会第2会派「新政会」も椎根に付いた。品川は椎根の総決起集会で「後を継いでもらう」と事実上の後継指名をした。
選対幹部は「(品川の)支持基盤を引き継ぐことができた」と自信をのぞかせる。一方で、品川の後継色が強まるほど、現職批判票が勅使河原らに流れかねないとの警戒感も高まっている。椎根は「発展的な継承」との言い回しで気を配る。与野党相乗りならではの難しさがある。
立候補表明は告示の3カ月前。40代のフレッシュさと県議13年の実績を陣営は前面に出す。若者や子育て世代などの浮動票を掘り起こすため、発育段階に応じた子育て支援や開成山地区周辺の一体的な再開発など身近な課題を政見に掲げ、SNSなどで広く発信していく。選対本部長の折笠正は「若い世代を引き付け、『選ばれる街』を実現させる」と言葉に力を込める。
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公明党郡山総支部、共産党郡山・安達地区委員会は自主投票とした。党員の支持動向が注目される。
勅使河原、椎根両陣営は投票率を前回並みと見込み、当選ラインは5万票程度とみている。
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高橋は若い世代が活躍できる地域づくりに向け、宇宙系工科大の設立、子育て支援の充実、女性が生きやすい環境の整備を訴える。SNSなども駆使し、幅広い有権者への浸透を目指している。
大坂は独自の地域通貨発行による経済活性化、食料・エネルギーの自給を目指す施策の推進、市議会提出議案の民意調査などを掲げ、若者が将来に希望を持てる社会の構築を唱えている。■立候補者(届け出順、敬称略)勅[て]使[し]河原[がわら]正[まさ]之[ゆき]
73
無新高[たか]橋[はし]
翔[しょう]
37
無新椎[しい]根[ね]
健[たけ]雄[お]
48
無新大[おお]坂[さか]
佳[よし]巨[きよ]
54
無新