福島便り
全国的な米価の高まりを受け、今秋の新米を返礼品とする福島県内市町村のふるさと納税に人気が集まり、一部市町村では、既に先行した予約が埋まりつつある。一方、昨年に収穫した返礼用コメが在庫不足に陥り、対応に苦慮する市町村も。不透明なコメの流通はしばらく続くとみられ、返礼用米の担当業者は集荷に難航する見方を強める。消費者からは不安の声が漏れる。
福島民報社が16日、県内の全59市町村に聞き取りした結果、返礼品にコメを採用しているのは53市町村だった。2025年産の新米の予約は少なくとも9市町村で始まった。柳津町では今年2月に受け付けを開始し、これまでに160件が寄せられた。前年同時期比で4・5倍ほどのペースに上る。返礼品を紹介するポータルサイトによっては「在庫なし」と表示されている。
特別栽培の町産コシヒカリを10キロ当たり、2万3千円の寄付で提供しており、昨年の寄付額の設定に比べると1万円高い。例年は税控除に向けて年末近くに申請が集中するが、町の担当者は「この時期から定期的な申し込みがある。コメを早めに確保したいのだろうか…」と驚く。
磐梯町も今月に入り、先行予約をスタートさせた。用意する5キロ入り400個のうち、既に半数近くが予約で埋まっているという。
寄付額全体の9割近くをコメの返礼で占める湯川村は、5月の大型連休明けの受け付け開始時期を例年より遅らせる。昨年は寄付額に対する調達費が国で定める「3割以下」の基準を上回ったことを踏まえ、米価の推移を慎重に見極めて寄付額を判断する考えだ。村の担当者は「(供給する)事業者などと交渉を進めている」としているが、受け付け時期は未定のままだという。■販売業者、納入停止も
一方、現在、返礼品用としてコメを扱っている県内市町村のうち、3割近くで在庫不足となっている。
郡山市の米穀販売業「飯島米穀」は、市の返礼品用のコメを納めている。例年は週当たり数人程度の受注だったのに対し、今年に入ってからは10人以上の引き合いがある。今月をめどに市への供給を止める予定だ。
専務営業本部長の飯島悠希さん(38)は「政府は備蓄米を夏まで放出する方針なので、価格高騰が抑制され、仕入れやすい状況になってほしい」と好転を願う。
いわき市の会社員福島明日可さん(27)は昨年に結婚し、夫と2人暮らし。「結婚してから毎日ご飯を炊くようになった。米価高騰はとても心配で、献立を工夫して節約しているが、いずれ生活に影響が出てしまうかもしれない」と不安げに話した。