福島便り
2月に記録的大雪に見舞われた福島県会津地方に、桜の季節が訪れた。厳しい自然を乗り越えた木々が花を咲かせ、本格的な春の到来を告げている。喜多方市高郷町の元市職員横山文弘さん(60)方のコヒガンザクラは大雪で幹が折れるなど傷ついたが、残った枝から淡い桃色の花を咲かせた。
市高郷総合支所管内の積雪は一時2メートルに迫り、住宅と空き家計6棟に被害が出た。横山さんは雪が落ち着いた2月中旬、除雪中に主な4本の幹のうち、3本が裂け、折れているのに気付いた。10年ほど前にも枝折れがあり、「今回こそは駄目かもしれない」と回復を諦めかけた。
やむなく3月末ごろに枝を切り、一部を敷地に植え直した。残った幹がつぼみをつけ、13日に花を咲かせた。花の数は以前の5分の1ほどに減ったものの18日に満開を迎えた。
桜は樹齢50年ほど。旧高郷村が収益化に向け、1972(昭和47)年に始めた花き促進事業の頓挫を受けて、父文康さん(85)が引き取った。結婚を機に植えた桜が枯れたため、コヒガンザクラを選んだという。一帯で最も早咲きで、横山さんも物心のついた頃から春を心待ちにしてきた。
横山さんは町村合併前、村の緑の少年団を連れて各地の植樹祭に参加した。県内の一本桜番付表の名所を巡るなど桜への思いは強い。「しばらくは元に戻らないかもしれないが、父が植えた桜を大切に守り続ける」と前を向いた。
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会津地方の花見の名所は18日、好天に恵まれた。喜多方市の日中線記念自転車歩行者道のシダレザクラは国内外からの見物客でにぎわいを見せた。
市によると、2月の大雪を受けて折れた枝の撤去や殺菌剤の塗布を行ってきた。喜多方観光物産協会の樟山敬一会長は「無事に咲いてくれた。大勢の方に見てほしい」と期待した。