福島便り
福島デンソーエアリービーズがホームから「初代女王」へ前進した。福島県郡山市で19日に行われたバレーボールの大同生命SVリーグ女子プレーオフ(PO)準々決勝第2戦。レギュラーシーズン(RS)4位のデンソーは、RSで負け越した5位の埼玉上尾メディックスをフルセットの末に下し、2連勝で準決勝に駒を進めた。今季最多の観客を集めた大一番で、3時間の激闘を制した選手たち。「声援が力をくれた」と今季から本拠地となった県民の後押しに感謝した。
デンソーがストレート勝ちした18日の第1戦から2連戦となった。2戦先勝方式で後がない埼玉上尾は布陣を大幅に替え、ベテラン勢で固めてきた。力の差がほとんどないライバル同士だけに「取っては、取られて」のシーソーゲームは最終第5セットにもつれた。
1点リードの18―17。デンソーのアウトサイドヒッター、モンチベレル・ロザマリアがブロックしたボールは相手選手に当たり、コート外へ。2点差をつけて勝利を決めると、ベンチにいた選手やスタッフらがコート上に飛び出し、歓喜の輪を作った。
会場の宝来屋ボンズアリーナ(郡山総合体育館)には2107人の声援がこだまし、第5セットは「デンソーコール」が選手を奮い立たせた。辻健志監督は試合後「1セット目から大きな声で鼓舞してくれた。選手の推進力となった」と声援の効果を強調。主将の川畑遥奈は「競っていたのでファンが沈んでいたら負けていたかもしれない。ホームの特権を感じた」と地の利をかみしめた。
紙一重の展開の中、堅実なプレーも勝利を引き寄せた。埼玉上尾とはSVリーグの前身に当たる、昨季のVリーグ女子1部準々決勝でも対戦。サーブやスパイクなど26回のミスを出し、1―3で敗れた。今回は第1戦で8回、第2戦で15回にとどめた。辻監督は「ミスを抑えて戦えた結果、持てる力を存分に発揮できた」と勝因を語る。
25日からの準決勝はRSで1位の大阪マーヴェラス、8位のAstemoリヴァーレ茨城のいずれかと戦う。川畑は19日の第1戦をストレートで制した大阪Mと当たる可能性が高いとみて「準決勝まで時間がないがコンディションを整え、やるべきプレーを遂行する」と次の舞台に目を向けた。「頂(てっぺん)」への戦いは、ここからが本番だ。■ホームの大声援背中押す
客席を赤く染めた県民の声が、勇敢に戦う選手の背中を押した。福島市の専門学校生角田遥さん(22)は本拠地移転を機に、デンソーファンに。母親と一緒に県内各地で行われた試合にできる限り、足を運んできた。一致団結する姿にひかれ、応援を続けている。準決勝はアウェー開催となったとしても、現地に駆けつける予定だ。「一人一人が力を出し切れば頂点に立てる」とエールを送った。
郡山市の自営業天羽雄二さん(58)は「2試合で決めてくれて良かった」と連勝での4強入りを喜んだ。この日、チーム最多の38得点を挙げたモンチベレル・ロザマリアをたたえた上で「みんなが活躍して、絶対に『頂』を勝ち取ってほしい」とさらなる快進撃を期待した。