福島便り
東京電力は23日、福島第1原発2号機から2回目となる溶融核燃料(デブリ)の試験的取り出しが完了したと発表した。今回は昨年11月に完了した初回とは異なる場所から採取。デブリの成分や撮影した炉内の画像などのデータを大規模取り出しの工法の具体化など廃炉作業を新たな段階に進めるのに役立てる。2回の作業の知見を生かし、東電は広範囲での採取が可能となるロボットアームを2025(令和7)年度後半にも投入する。規模を拡大することで、早期取り出しへの道筋を付ける考えだ。
東電によると、23日は午前9時ごろに作業を開始。作業員が装置を収納している構造物の側面扉を開けて、デブリの入った運搬容器を取り出した。容器ごとコンテナに入れて同日午前10時15分に2回目の採取作業が完了したと判断した。デブリは建屋内にある分析装置「グローブボックス」に運び込んだ。重さや放射線量などを測定する。
デブリの性状や分布の情報量を増やすため、今回は原子炉格納容器の中心部に初回よりも1~2メートル近い場所から採取した。中心部の真上には溶け落ちる前の核燃料があった原子炉圧力容器などがあるが、詳しい状況やデブリの堆積の具合などは不明な点も多い。今後、日本原子力研究開発機構(JAEA)大洗原子力工学研究所(茨城県大洗町)に輸送し、調べることで炉内の詳細な状況の把握につながる可能性もある。また、カメラで確認できた中心部周辺の画像も改めて分析する。
初回採取時は、装置を押し込むパイプの並び順を誤るなどトラブルが相次いだ。教訓を踏まえ、不具合を起こしたカメラを新品に取り換えた他、デブリ採取に携わる全作業員の手順確認などの訓練を徹底するなど対策を講じた。結果、目立ったトラブルはなく着手から9日での作業完了となった。東電は「1回目の改善策を反映し順調に作業を進められた」と作業を重ねる意義も強調した。
今年度後半にも投入されるロボットアームは2月までに性能確認などの試験が完了している。現在、楢葉町の研究施設でモーターやケーブルの状態を確認する全体点検を実施中という。ロボットアームでは原子炉内の映像撮影などによる調査も行う。2回の取り出し作業で得られた知見を踏まえ、採取回数をいかに増やせるかが今後の鍵となりそうだ。
政府と東電は2051年までに廃炉を終える目標に向け、2030年代初頭に3号機での本格的なデブリ取り出しを始める計画だ。林芳正官房長官は23日の会見で「本格的な取り出しに向けた検討など、今後の廃炉作業に一層の知見が得られることを期待している」と述べた。