犯罪の芽 社会で摘め 刑法犯少年大幅増 昨年福島県警まとめ 寄り添う体制必要

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犯罪の芽 社会で摘め 刑法犯少年大幅増 昨年福島県警まとめ 寄り添う体制必要

福島便り


福島県内で2024(令和6)年に摘発された刑法犯少年(犯行時14歳~20歳未満)は215人で、前年の121人より94人(77・7%)増加した。非行の入り口になりやすいとされる万引、自転車盗などの初発型非行の割合が、過去10年間で最高となった。県警は犯罪の芽を摘もうと、非行防止教室の実施などに重点を置く。専門家は「社会全体で子どもたちに寄り添う体制づくりが欠かせない」と指摘している。
県警本部少年女性安全対策課がまとめた。2015(平成27)年から昨年までの刑法犯少年数は【グラフ(1)】、昨年の方部別の内訳は【グラフ(2)】の通り。昨年の摘発数のうち、中高生は66・5%に上った。方部別では県中・県南が最多の73人(前年比38増)、会津が50人(同30人増)、いわきが43人(同9人増)、県北が39人(同13人増)、相双が10人(同4人増)だった。
昨年の刑法犯少年のうち初発型非行の割合は61・4%。内容別に見ると、万引が73人(前年比29人増)と最も多く、自転車盗は37人(同25人増)、占有離脱物横領が19人(同15人増)と続いた。
同課によると、新型コロナウイルス禍の収束後、県内で刑法犯認知件数が増えた。それに伴い捜査した結果、少年の摘発数が増加したとしている。
初発型非行は比較的、安易に行われ、恐喝や傷害など悪質な犯罪につながりやすいとの懸念がある。県警は一部の少年は順法精神が希薄で、場当たり的に初発型非行に手を染めるケースがあるとみている。こうした実態を踏まえ、県警は各小中学校と高校で年間500回ほど非行防止教室を開いている。生活環境の変化が特に大きい4~7月に集中的に開催し、万引や自転車盗が重大な犯罪であることや少年非行の現状を説明している。
各学校などと情報共有し、非行の兆候や問題を抱える少年らに関する連絡を受けた場合、面談を実施するなどきめ細かい対応を続ける。少年女性安全対策課の担当者は「軽い気持ちで犯罪に手を出さないよう、一人一人の規範意識の向上につなげたい」としている。■福大・高橋准教授
コロナ禍、SNSで交流希薄に
刑事法学を専門とする福島大行政政策学類の高橋有紀准教授は、新型コロナウイルス禍の影響や交流サイト(SNS)の普及などに伴い、子ども同士の交流が希薄になっていると指摘。「学校や家庭で孤立を深めた児童生徒が初発型非行に走る懸念がある」とした上で、「こども食堂など、心のよりどころとなる『第3の居場所』づくりが欠かせない」と訴える。
高橋准教授は県内の刑法犯少年の再犯率が25%程度である点を踏まえ、現状では重大犯罪につながるケースは多くないとしている。児童生徒が一度、罪を犯しても更生する可能性は十分あるとし「周囲の大人が子どもたちを見守り、育てていくという意識を改めて持つ必要がある」と語った。