第5回野口英世アフリカ賞 ジムデ博士(マリ)、DNDi(医療団体)に

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第5回野口英世アフリカ賞 ジムデ博士(マリ)、DNDi(医療団体)に

福島便り


政府は25日、第5回野口英世アフリカ賞の受賞者・団体を発表した。医学研究分野はマラリアの治療や病状に関する共同研究に貢献したアブドゥライ・ジムデ博士(61)=マリ共和国=、医療活動分野は国境なき医師団(MSF)を中心に取り組む「顧みられない病気の新薬開発イニシアチブ(DNDi)」が受賞した。
授賞式は8月に日本で開かれる第9回アフリカ開発会議(TICAD)の席上で行われる。ジムデ博士とDNDiに賞状と賞金各1億円が贈られる。
野口英世アフリカ賞は、野口博士の功績にちなみ、感染症対策の功績者をたたえようと、2006(平成18)年に政府が創設した。第1~3回は5~6年に一度表彰してきたが、第4回から3年に一度とした。受賞者・団体は野口英世アフリカ賞委員会(委員長・国井修グローバルヘルス技術振興基金CEO)が選び、石破茂首相が決定した。■マラリア撲滅研究30年
幼少期に兄弟をマラリアで失った悲しい体験が、アフリカの人々の生命を脅かす病気の研究を志すきっかけとなった。
マラリアは蚊が媒介し発症する三大感染症の一つ。「マラリアのないアフリカ」という夢の実現に向け、抗マラリア薬の臨床開発などを通じて病気の撲滅に約30年間にわたり取り組んできた。1万3350に上る症例を集めて、大規模な追跡調査を実施した。安全性への懸念から患者一人につき1回までの使用制限があった治療薬を、複数回投与しても安全に問題はないことを実証した。世界保健機関(WHO)の承認も受け、サハラ以南のアフリカ諸国22カ国を含む27カ国で使用され、多くの子どもたちの命を救ってきた。
マラリア対策を目的とした共同研究ネットワークを設立し、実験サンプルや遺伝子データなどを容易に共有できる体制も構築した。■顧みられない病気の新薬開発イニシアチブ(DNDi)
有効な治療法提供
2003(平成15)年に国境なき医師団など七つの国際組織が中心となり設立した非営利組織。治療薬がない「顧みられない病気」に苦しむ人々に安全で有効かつ入手可能な価格の治療薬・治療法の研究開発に取り組んでいる。
設立以来、アフリカ睡眠病や小児エイズウイルス(HIV)など6疾患に13の治療法を開発・提供した。寄生虫が体内に侵入し睡眠障害などを引き起こす睡眠病に対しては初の経口治療薬の開発に成功。従来の治療と比べ、入院が不要となるなど医療システムの負担軽減に貢献している。