子どもの声再び響け 「こびとの森」3日誕生 福島県いわき市の貝泊地区 会社員から転身の酒井千春さん

  • [エリア] 鮫川村 いわき市
子どもの声再び響け 「こびとの森」3日誕生 福島県いわき市の貝泊地区 会社員から転身の酒井千春さん

福島便り


古里の森に再び、子どもたちの弾む声を―。福島県いわき市田人町貝泊地区に5月3日、自然の尊さを楽しみながら学ぶ「こびとの森」が誕生する。同市好間出身の酒井千春さん(51)が森林の役割や環境保護の大切さを伝えたいと会社員から転身。地元の理解と協力を得て整備した。過疎の進む地域では11年前に中学校が閉校し、子どもが減り続けている。関係者は「山里を活気づけるきっかけに」と歓迎している。
施設は旧貝泊小中のやや北側、木々が茂り、鳥のさえずりや小川のせせらぎが響く民有森の一角にある。約1・8ヘクタールの敷地に立ち寄り先となる「こびとの家」を3棟配置。それぞれに「土と森の命」「酸素と二酸化炭素」「癒やしと雨」―というテーマを持たせている。
「こびと」は家を空けており、子どもたちはガイド役の酒井さんの語りを基にこびとが森を守る上で、どんな役割を担っているのかを想像し、森の機能や自然の大切さを理解していく。小学生のみを対象とし、来場は予約制で受け入れる。
原点は酒井さんの幼少期にある。好間の山にあったバンガローが何かと母に尋ね、「小人さんの家だよ」と教えられた。化粧品会社で美容部員として働く中で東京電力福島第1原発事故が発生。外での遊びが制限され、運動不足や自然離れが進む状況に胸を痛めた。
「自然に関わる仕事がしたい」との思いはその後も消えず、こびとの森を作ろうと決心した。森の案内人や市環境アドバイザー、キャンプインストラクターなど野外活動に関する資格を取り、昨年9月、33年間勤めた会社を退職して運営会社を起こした。
市などが催すビジネスプランコンテストで構想を発表し、最優秀賞に輝いた。賞金や県の補助、クラウドファンディングへの協賛などで整備費を工面した。適地を探す中、地域づくり団体「貝泊コイコイ倶楽部」顧問の蛭田一さん(73)と出会い、森の持ち主の紹介や周知、資金集めに協力を得て準備してきた。
貝泊地区はいわき市南西部、鮫川村に接する農村地域。市によると、半世紀前の1971(昭和46)年に374人(95世帯)が住んでいたが、昨年10月1日時点で70人(37世帯)に減った。1967年に90人いた貝泊小の児童も年々減り、貝泊中とともに2014年春に閉校した。地区で暮らす小学生は1人という。
蛭田さんは「子どもの声が増えれば、住民も元気になる」と新施設の効果に期待している。「外の人に貝泊の魅力を知ってもらうため、周知やもてなしに協力したい」と前向きだ。
酒井さんは「自然に親しみ、自然を守ろうと願う心を育む場所にしたい。温暖化やごみ、豪雨などの環境問題に関心を寄せる人が増えればうれしい」と話している。■カフェ、サウナ整備
大人も一息つける場に
「こびとの森」の敷地内には、同行の大人向けにコーヒーやハーブティーを味わえるカフェ、屋外型サウナを整備する。そばの小川で汗を流せる。いずれも近く営業を始める。森林浴と合わせた瞑想[めいそう]体験も受け付ける。貝泊コイコイ倶楽部が運営する1棟貸しコテージ「星の森」も隣接している。こびとの森の予約、問い合わせは公式ホームページhttps://kobitonomori-iwaki.com/へ。