福島便り
福島県南相馬市小高区の歴史を紹介する「小高町歴史郷土資料室」は、区内の旧小高教会幼稚園を改修して開設された。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後、同幼稚園は休園状態となり一時は園舎の解体も検討されたが、卒園生の保存を願う思いから資料室に生まれ変わった。
小高区の歴史を時期ごとに区分し、説明文や写真、地図などを用いてパネル形式で紹介している。かつて盛んだった養蚕や郷土芸能を取り上げる「被災前」、地震や津波、原発事故による被害を扱う「被災後」、移住者の挑戦や街中での菜園作りを取り上げる「解除後①」など五つに分けられている。
映像資料や震災直後を収めた写真集、2011(平成23)年3月の同幼稚園の行事予定が書かれた黒板なども展示されている。
小高教会幼稚園は小高伝道所に併設して1939(昭和14)年に開園し、多くの子どもが通ったが、昨年3月に廃園となった。休園期間中に建物解体が検討された際には、双葉屋旅館女将の小林友子さんら卒園生が園舎保存を強く望んだため、伝道所の牧師飯島信さんが資料室として残せるよう尽力した。東北大のボランティアらが展示制作に協力した。
今後、伝道所や幼稚園の歴史を紹介するスペースを作る。小高区の住民らが作品を展示できるギャラリーも設ける。飯島さんは「住民にとっては懐かしい写真を見て交流できる場に、初めて訪れた人にとっては小高がよくわかる施設になってほしい」と願う。
観覧無料。開館時間は原則、平日の午前10時から午後5時まで。問い合わせは飯島さんへ。