剣で再び輝く川俣に フェンシングで地域づくり30年 福島県川俣町、地元高校の選手強化に予算10倍

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剣で再び輝く川俣に フェンシングで地域づくり30年 福島県川俣町、地元高校の選手強化に予算10倍

福島便り


フェンシングの町「川俣」に再び輝きを―。1995(平成7)年の「ふくしま国体」で福島県川俣町が競技会場となったのを契機に、フェンシングを核としたまちづくりを進めて30年の節目を迎える。ただ、川俣高フェンシング部は二十数年、日本一の栄冠からは遠ざかっている。強豪校の復活が地域活性化につながるとして町は選手強化のために予算を拡充し、同校と一体となって取り組みを加速させている。
フェンシング部は1990年に愛好会から部に昇格した。「ふくしま国体」を機に強化に力を入れ、創部10年後の2000年には富山国体で福島県代表として出場した少年男子で栄冠に輝いた。その後の全国大会では準優勝や4強はあるが、日本一にはたどり着けていない。直近の戦績は3年生の本間陽向さん(17)が昨年の全国高校総体(インターハイ)で5位入賞。本間さんは5月末からの県高校体育大会(県高体)に向けて「県大会を勝ち抜き、インターハイで優勝する」と闘志を燃やしている。
町は2025(令和7)年度当初予算で、同校の魅力向上推進事業に前年度の約10倍となる2670万円を計上した。オリンピアンやメダリストらを複数回にわたり招き、世界レベルの心技体を選手に教える。第1弾は5月5、6の両日、パリ五輪日本代表のサーブルコーチを務め、バルセロナ五輪に出場した経験のある橋本寛さん(NEXUS
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CLUB)を招く。ふくしま国体では県代表として臨み、福島県の高校教諭となり同部顧問を務めるなど選手育成に尽力してきたレジェンドだ。
二十数年ぶりの全国頂点に向けて育成環境を整えている。同校に今春、同校OBで2019年の茨城国体でベスト4の実績を持つ佐藤篤志教諭が赴任し教諭2人、外部指導員3人と手厚くなった。「母校の顧問になれて幸せ。初心者でも成長できる環境にある」と後輩の指導に熱が入る。
同校は2025年度に入学生の全国募集を開始し、県外から2人が入学した。町は2024年度補正予算で学生寮3戸と食堂を整備した。全国に川俣の名を知らしめ、県内外から有望選手を集めて入学生を増やしたい考え。藤原一二町長は「学生の受け入れ体制を万全にしたい」と意気込んでいる。■町スポ少から4人入部
地元の川俣町フェンシングスポ少から4人が川俣高フェンシング部に入部した。サーブル種目の1年生トリオは全国トップを狙える素質と実力があると周囲から期待されている。
田代凌雅さん(15)は「練習では高め合える関係。試合ではライバルとして戦う」と負けん気が強い。学生寮の「1期生」となった福島市出身の大沢与朗さん(15)は「通い続けた町に住むことになり、競技が楽しい」と笑顔を見せる。高橋騎士さん(15)は「全員の力で勝ち抜いていく」と述べ、“川高”の新たな歴史を刻むと誓う。