少子化を生きる ふくしまの未来 第5部「産みやすさ」(6) 理解醸成(下) 啓発の機会増やす 幅広い悩みに寄り添う

  • [エリア] 福島市 郡山市
少子化を生きる ふくしまの未来 第5部「産みやすさ」(6) 理解醸成(下) 啓発の機会増やす 幅広い悩みに寄り添う

福島便り


妊娠・出産や性に関する意識と知識を早くから伝える取り組みは、行政にも広がりつつある。福島県は2024(令和6)年度から、将来の妊娠に備えた健康管理「プレコンセプションケア(プレコン)」の普及に本腰を入れ始めた。
昨年6月に県助産師会に運営を委託し、「ふくしま性と健康の相談センター」を開設した。会員助産師が月曜~土曜の正午から午後7時まで福島市の事務局に詰め、健康や妊娠・出産、性を巡る悩みに電話やメール、LINE(ライン)、対面で応じている。
県助産師会によると、開設から今年3月までの10カ月間で、233件を受け付けた。全体の半分以上を10代からが占めている。性に関する悩み事や妊娠・出産の相談、月経など体調面の心配…。電話口や文面を通し、若者のさまざまな姿が浮かび上がる。
小谷寿美恵会長(58)は10代の利用者の多さには、開設に際して県内の中学3年~高校3年の男女にセンターの案内カードが配られたことが影響しているとみている。一方、更年期まで幅広い年代の相談を受け付けるため、昼休みや夕方には不妊などに悩む社会人からの相談が寄せられる。
県助産師会は学校と連携した健康教育にも取り組んでいる。昨年度は中学と高校に約80回、会員を講師として派遣。性的同意や性感染症、ジェンダー意識などについて指導してきた。
小谷会長は「男女の体の仕組みや妊娠に関する悩みを打ち明けたり、深く理解する機会は限られている」と指摘。「できるだけ多くのチャンネルを用意しておくことが大切ではないか」と相談や教育を通して若い世代に寄り添う意義を説く。
県は昨年8月にプレコン啓発事業の第1弾となるフォーラムを郡山市で開催。国内でプレコンを提唱した医師、妊活を経験したタレントらを招き、講演や対話を繰り広げた。今年度は企業経営者向けのセミナーを浜通り、中通り、会津の県内3方部で催す。県内の各大学を訪ねての出前講座も展開する予定だ。
県が昨年度に実施した結婚・子育てに関する県民の意識調査では、「女性は何歳まで子どもが生めると思うか」との設問に対し、「40歳から44歳まで」との回答が45・1%と最多だった。ただ、出産には一般に適齢期があり、時期を過ぎると出産によるリスクは高まる。子育て支援課の佐藤伸司主幹は出生数が減る一方で不妊治療の希望者は増えている現状に触れ、「人生の早い段階から出産について考えるきっかけにしたい」と啓発の意義を説明している。
=第5部「産みやすさ」は終わります=