福島便り
福島県会津地方の高校生17人が若者ならではの視点を生かし、地元企業の魅力を中高生に発信して地域への定着を促すプロジェクトに乗り出した。会津若松市と連携し、7月に初開催する企業説明会「高校生プロデュース仕事体験フェスタ」の企画・運営を担う。高校生目線でアイデアを打ち出し、企業との接点を創出する。就職を望む生徒だけでなく、進学希望者の将来のUターンにもつなげる。■業務体験でより身近に
「どんな企業があるか分からず、地元で就職するイメージを持ちにくい」。そんな思いを抱いた会津学鳳高の生徒たちが、学校活動の一環で市の担当者に意見を伝えたのがきっかけとなった。
人口減少が続き、地域の活力が失われつつあると指摘されている。会津若松市によると、2018(平成30)年に18歳だった市民は1281人。5年後の市内在住の23歳は976人で、305人が市外に流出した計算になる。進学や就職を機にそのまま首都圏などに残る傾向があるとみられる。
高校生たちは若者の流出を防ぐ手だてを考え始めた。「具体的にどう働けるのか体験できれば将来、会津に残る選択肢が生まれるのではないか」と感じた。これまで市が主催していた就職関係の行事は企業がブースを設け、高校生に業務内容について説明するだけにとどまっていたからだ。
市も高校生視点のイベントを開催することで、地元企業をより身近に感じられると考えた。時間を確保して業務を体験してもらい、具体的に働くイメージを抱いてもらう。就職活動で知りたい情報は何か、どのような周知の仕方なら興味を持ってもらえるかなどの工夫を凝らしてもらう。
市商工課が高校や交流サイト(SNS)を通じて募集し、会津、葵、会津学鳳、若松商、会津農林、会津若松ザベリオ学園の各校の1~3年生計17人が手を挙げた。企業は市内に事業所を置く6団体が参加する。1企業に対し2~3人の高校生がグループとなり、出展内容の考案や当日の運営を担う。
フェスタは市の主催。7月19、20の両日に市役所新庁舎で催す。企業がブースを出展し、体験プログラムを提供する。体験時間は30分から1時間程度を想定している。どのような内容にするかは5月以降、高校生と企業が月2回程度のミーティングやメッセージアプリなどでやりとりし、ゼロから考える。中高生を対象としているが、小学生や大人の来場も歓迎する。
市商工課の山口芽久実さんは「高校生の目線で、大人では思い付かない着眼点を生み出してもらいたい」と期待している。■働きやすい雰囲気大事
担当者と初回打ち合わせ
4月25日に開かれた初回のミーティングでは、高校生と参加企業の担当者が顔を合わせ、イベント成功に向けて思いを一つにした。
会津学鳳高3年の中嶋悠[はるか]さん(17)=会津若松市=は関東圏への大学進学を希望している。これまでは首都圏で働きたい気持ちが強かったが、学校の活動で地域の人々と触れ合ううちに地元での就職にも興味が湧いた。「自分と同じように、会津で働くイメージが抱けないという理由で都会に就職する人も多いのではないか。そんな人にこそ地元で働く魅力を伝えたい」と意気込む。
就職先に求めるのは、仕事とプライベートの両立や働きやすい雰囲気かどうかなど。今は給与など金銭面よりも職場環境に関心が高い。イベントでは働く人々と接することで、会社の印象も伝わりやすくなると考えている。「多くの学生に来場してもらい、地元の企業を知るきっかけにしてほしい」と力を込めた。