廃棄時に出火恐れリチウムイオン電池 分別回収福島県内まちまち 居住市町村に確認を

  • [エリア] 郡山市 三春町 会津若松市 磐梯町 昭和村 会津美里町 相馬市 南相馬市
廃棄時に出火恐れリチウムイオン電池 分別回収福島県内まちまち 居住市町村に確認を

福島便り


福島県内59市町村のうち34市町村が、スマートフォンなどに使われるリチウムイオン電池を家庭ごみとして回収していない。福島民報社の調べで分かった。一般ごみに交ぜて廃棄され出火や発煙につながる事例が相次いでいるのを受け、環境省は4月に全国自治体に分別回収を徹底するよう通知した。ただ、強制力はなく、市町村によって対応はまちまちだ。居住する市町村の分別ルールに従って廃棄するか、家電量販店や役所などの回収ボックスを利用するか―。識者が注意を促している。
福島民報社が各市町村の担当者から聞き取った5月1日時点の回収状況は【下記】の通り。回収していない34市町村のうち会津若松市、郡山市など多くの市町村は住民に対し、家電量販店などの回収ボックスへの持ち込みを求めている。会津美里町、昭和村などは「引き取り可能な業者を確保できない」とした。下郷、只見、南会津の3町の南会津地方広域市町村圏組合は、発火などの危険を伴うため収集車での回収はしていないが、住民がごみ処理場に持ち込んだ場合は処分を受け付けている。
一方、回収している25市町村では、役所内に回収ボックスを設けている場合が多い。「不燃ごみ」「危険ごみ」などとして収集しているケースもある。三春町は住民からの要望を受け、回収に向けた検討を昨年度に開始し、5月から役場内に回収ボックスを設け、町清掃センターでも受け入れている。
リチウムイオンは小型でパソコンやスマートフォン、各種家電など幅広く使われる。ただ、強い圧力や衝撃が加わると発熱、発火する恐れがある。他の家庭ごみと一緒に捨てられ、火災につながる事例が全国各地で起きている。環境省によると、2023(令和5)年度に全国の市町村でリチウムイオン電池が原因とされる出火は8543件発生した。このうち、県内は419件だった。
環境省の通知では、ごみステーションや戸別での分別収集、地域の特性によって回収ボックスなどの併用を求めている。同省の担当者は「危険性を考慮し、他のごみと分ける分別収集が望ましい」とし、住民に対しては居住する市町村のルールに従って処分するよう呼びかけている。
通知を受け、県内の未回収市町村でも収集開始を目指す動きが出ている。磐梯町は5月中旬ごろから回収を始める他、郡山市は今年度内の回収を計画しているという。
しかし、未回収市町村の多くは対応を「検討中」としている。石川、玉川、平田、浅川、古殿の5町村でつくる石川地方生活環境施設組合や南相馬市は運営する処理場では適切な処分ができないとする。ある町の担当者は「業者に引き渡す必要があるが、財政負担が増す」と主張。「国が補助制度を創設するなど、きめ細かな支援が必要ではないか」と指摘した。■県内のリチウムイオン電池の回収状況※1日現在【回収していない=34市町村】
会津若松、郡山、いわき、須賀川、相馬、南相馬、伊達、桑折、国見、川俣、鏡石、天栄、下郷、只見、南会津、磐梯、柳津、三島、金山、昭和、会津美里、石川、玉川、平田、浅川、古殿、広野、富岡、川内、大熊、双葉、浪江、葛尾、飯舘 【回収している=25市町村】
福島、白河、喜多方、二本松、田村、本宮、大玉、桧枝岐、北塩原、西会津、猪苗代、会津坂下、湯川、西郷、泉崎、中島、矢吹、棚倉、矢祭、塙、鮫川、三春、小野、楢葉、新地■「国やメーカーの支援重要」
識者
リチウムイオン電池の処理に詳しい国立環境研究所(茨城県つくば市)の寺園淳上級主席研究員は「環境省の通知は妥当」と評価し、基本的には自治体が回収を推進すべきとしている。ただ、人手不足や費用面で回収が難しい自治体もあるため「国やメーカーが(自治体を)支援していくことが重要だ」と訴えた。※リチウムイオン電池
充電して繰り返し使える2次電池。リチウムイオンが正負の電極の間を移動して、充電や放電を繰り返す。ため込める電気の量が多いため、使用を重ねても性能が落ちにくい。パソコンやスマートフォンなどのモバイル機器に加え、電気自動車(EV)にも利用されている。ただ、電池内部の電解液には引火性のある有機溶媒が使われており、強い衝撃で内部がショートすると発火する恐れがある。