福島のニュース
福島市の飯坂温泉街で190年の歴史を持つ松島屋旅館は6月、「松島屋
桃香」として復活する。2度の福島県沖地震などで被害を受け、施設改修に伴い2年半の休業を余儀なくされたが、多様なニーズに応えるユニバーサルデザインが取り入れられた新施設で、温泉街を盛り上げていく。
新施設は地上4階、地下3階建て、全12室。貸し切り風呂や部屋食などを充実させ、プライベート空間を確保した。車いすの利用客や子ども連れにも優しい設計に整備し、ペット同伴で宿泊できる部屋も用意している。
料理は福島県食材を生かした創作料理。常磐ものや季節の地元名産果物などを使用する。
ロビーではドリンクが無料で何度も楽しめる。福島県の有名日本酒やワインのほか、県産果物などを使用した自家製シロップでジュースが味わえる。
女将の高橋美奈子さん(57)は「資材高騰などがあり、何度も計画を変更した。再開は無理だと思う時も…」と振り返る。しかし歴史ある旅館を廃屋にすることがないよう、試行錯誤を重ねた。
美奈子さんはクラウドファンディングで資金を募る中、東日本大震災時に受け入れた避難者の名前を見つけた。再開を待ち焦がれる声に涙がこぼれた。夫で社長の宏幸さん(57)と共に「『ただいま』と帰って来られる場所をなくしてはいけない。これがわれわれの原動力だ」と力を込める。