福島県の帰還困難区域 活動全面自由化検討へ 個人ごとに線量管理 自民復興加速化本部が提言案

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福島県の帰還困難区域 活動全面自由化検討へ 個人ごとに線量管理 自民復興加速化本部が提言案

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自民党東日本大震災復興加速化本部は、東京電力福島第1原発事故に伴う福島県の帰還困難区域での活動の全面自由化を検討するよう第14次提言で政府に促す方向で調整に入った。これまでの区域一律での立ち入り規制から個人の放射線量管理による安全確保への移行で、帰還困難区域内で手つかずとなっていた森林の整備などの具体的な活動が可能になる。13日、党本部で開いた総会で、この新たな考え方を盛り込んだ第14次提言骨子案を議論した。
復興加速化本部は震災と原発事故発生から14年以上が経過し、空間線量の減衰が進んできたことや地元からの要望などを踏まえ、線量管理を「区域から個人」に改めた方が避難指示解除に向けた復興事業をさらに推進できると判断した。安全確保の方策をバリケードでの立ち入り制限ではなく、個人ごとの被ばく線量管理にすることで、区域内での活動を自由化することを想定している。
政府は将来的に帰還困難区域全域の避難指示を解除する方針を掲げているが、特定復興再生拠点区域(復興拠点)と特定帰還居住区域以外の残された土地や建物の扱い、森林活動の在り方についての方針はこれまで示していなかった。
自民、公明両党の復興加速化本部による提言はこれまで政府の復興政策の根幹を成してきた経緯がある。自民、公明両党で調整した上で第14次提言を取りまとめ、6月上旬にも政府に申し入れる考えだ。政府は第2期復興・創生期間後の2026(令和8)年度から5年間の復興の基本方針の改定を予定しており、与党提言を踏まえた上で6月中の閣議決定を目指している。
谷公一本部長は総会終了後の報道陣の取材に対し「帰還困難区域での活動を自由化する取り組みをぜひ始めたいと思っている。提言の中で大きな柱になる」と説明した。
骨子案のポイントは【下記】の通り。原発事故に伴う除染で出た土壌の県外最終処分の実現に向け、政府が率先して理解醸成のため福島県外での再生利用の実績を着実に重ね、「使われることが普通」な状況をつくるよう求める方向だ。第13次提言で指摘した食品の放射性物質の基準の妥当性についての検証に関しては野生キノコや山菜などの消費量の少ない食品も含めた放射性物質の摂取量の推定を実施するよう提案する。【第14次提言骨子案のポイント】■帰還等の促進に向けた環境整備・個人線量ベースでの安全確保を前提に活動を全面自由化していくことも検討すること■中間貯蔵施設・復興再生利用・指定廃棄物・まずは福島県外での復興再生利用の案件の創出と拡大に取り組んでいくこと。その際、政府が率先して理解醸成のための実績を着実に重ねることが重要■風評払拭・リスクコミュニケーション・流通前の野生のキノコ、山菜などの消費量の少ない食品も含めた放射性物質の摂取量推定などを行うこと■事業・なりわいの再建、新産業の創出・福島国際研究教育機構の研究体制の確立に向けた道筋、地元地域のメリットを生み出すための方策を検討すること■農林水産業の再建・2030年度末までに営農再開可能面積の75%に該当する約1万1000ヘクタールの営農再開を新たな目標とし、実現に向けて地元の取り組みを力強く、責任を持って後押しすること・小規模農家も含め、野菜集出荷施設などの十分な活用による産地づくりが進むよう野菜価格安定制度の特例を設けること■廃炉に向けた取り組み・燃料デブリの取り出しや調査により原子炉内部の状況把握を進め、今後の廃炉の技術的見通しを示すといった全体像、および具体的な進捗[しんちょく]の提示を検討すること■昨今の社会情勢を踏まえて留意すべき点・物価や人件費の高騰の対策と同様、トランプ関税の影響についても要言及