福島のニュース
福島県猪苗代町は7月にも1人暮らしの高齢者宅の電気使用量などから、介護が必要となる一歩手前のフレイル(虚弱)の兆候を見つけ、早期の予防につなげる取り組みに乗り出す。フレイルの疑いが見つかった世帯には保健師が訪問。健康状態を聞き取り、介護が必要となる前に生活改善の指導などの適切な対策を講じる。人口減少が続く中、町内では独居高齢者の世帯が増えている。周囲が気付かないまま心身の衰えが進行している事例もあり、人工知能(AI)など最新技術を活用して高齢者の健康の見守りを進める。
事業では要支援や要介護認定を受けていない高齢者単独世帯を対象に希望を募る。流れは【イメージ図】の通り。電気使用量を各家庭に設置されている電力スマートメーターで計測する。町によると、健康な人ほど外出や掃除、洗濯、調理などの時間が多く、電気使用量が頻繁に変化する。一方、認知症などで身体機能が低下すると、活動量が減り、電気の使い方も変わる。電気使用量の変動幅が従来よりも縮小した場合にフレイルの疑いがすぐに発見できる仕組みとなる。
数値は提携事業者に自動送信され、これまでの電気使用量との違いなどをAIが解析することでより精密な判定が可能となる。町は毎月1回、事業者から結果報告を受ける。フレイルの疑いがある世帯に保健師が訪問して健康状態を確認する。フレイルを放置すると、認知症が進行したり、要介護になったりするリスクが高まる。食生活や運動習慣の改善、サロンへの参加を含む地域とのつながりづくりなど対象者の状態に応じた的確な指導・助言を行うことで、効果的な予防、改善につなげる。
中部電力グループが開発したシステムを活用する取り組みで、県外ではフレイルの早期発見、予防に実績を上げているという。町によると、県内市町村では初の導入となる。
2023(令和5)年9月末現在、65歳以上で1人暮らしの町民は972人。2021年の900人に比べ、わずか2年で1割近く増えた。地域で健康に不安を抱える高齢者を早期に見つける難しさも年々増しており、孤独死などの課題の深刻化が懸念されている。町保健福祉課高齢者福祉係の湯沢悦子係長は「少しでも早くフレイルの兆候を捉え、適切な支援を展開する。町民の健康寿命延伸に向け、気軽に利用してもらいたい」と話している。■福島県「健康寿命」
男女とも全国下位
自立して日常生活を送れる期間「健康寿命」について、福島県は2022(令和4)年時点で男性が71・89歳で全国42番目、女性が74・74歳で43番目で、健康寿命延伸は全県的な課題となっている。県健康づくり推進課は「後期高齢者の増加が見込まれる中、工夫を凝らしたフレイル予防の取り組みがより重要になる」としている。
一方、浪江町では、高齢者世帯にある電球の点灯記録と通信機能を組み合わせた見守りサービスを2021年4月に導入している。