福島のニュース
職場の熱中症対策を義務付ける改正労働安全衛生規則の施行が6月1日に迫り、県内企業は労働者の命を守るための備えを急いでいる。発症者が出た際の報告の体制などの取り決めが義務付けられ、怠れば罰則が科せられる。屋外の勤務でリスクが高まる建設業者からは「従業員の意識付けにつながる」と歓迎する一方、勤務業態によっては戸惑いも見える。■福島県内企業社員研修や設備投資
「ルールがあれば、安全管理の意識が強まる」。郡山市のオオバ工務店で安全管理者を担う総務部課長の増子和弘さん(50)は義務化を前向きに捉える。改正規則に準じた取り決めを既に社内で共有してきた。ただ、実効性を高めるには現場で働く一人一人の心がけと知識が重要だとし、若手・中堅社員に熱中症予防指導員研修を受講してもらう予定だ。広い山中で間伐や造林を手がける林業では、重篤化を防ぐための適切な処置に難しさが浮かぶ。棚倉町の陣野林業は社員が迅速に対応できるよう2人一組で山に入る体制を取るが、場所によっては外部との通信が遮断される可能性もある。陣野祥一社長(39)は「万が一に備え、緊急連絡体制の在り方を再度確認しなければ」と語った。
各企業では暑さに備えた職場づくりが進む。伊達市梁川町にある自動車総合リサイクル業ナプロアースは気温の上昇に合わせ、解体作業場に置く扇風機を順次増やしていく方針だ。相浦光二社長(52)は「設備投資が負担になる部分もあるが、業務の効率化や従業員の安全が第一」と表情を引き締める。会津若松市の警備業グリーセスは体感温度を下げるため、通気性に優れたヘルメット、冷感シートなどを支給している。
14日の県内は高気圧に覆われ、30の観測地点のうち14地点で夏日となった。福島医大医学部衛生学・予防医学講座の各務竹康教授(45)は「まだ体が暑さに慣れていない時期で、熱が体内にこもりやすい」と指摘し、定期的な水分補給と衣服での温度調整の重要性を強調。「疲れて1人で休んでいる時は注意が必要。周囲からの声かけを意識してほしい」としている。